終焉のサングィネム

side:Eliza





「依音、いってくるね!」
「………。ええ、エリザ…」
「……」

名古屋での戦いから、依音は少し元気じゃなくなった。
真音と会えたはずなのに、いっしょにいなかったし……。
うーん、どうやったら元気になるのかなぁ?

「依音ー?」
「…何………?」
「もしもだけどさ、依音のこころが落ちついたら。またいっしょに真音に会いにいこ?」
「………居場所、知ってるの……?」
「あ、あはははっ……」

やっちゃったかも……。
でもいいや、話してあげたほうがもしかしたら元気になるかもしれないし!
真音たちがいる場所は、フェリドからじょうほーを得ている。
だから、会いにいけなくはないんだよ。
って、言ったけど……。

「………そっ、か」
「あ、れ……?」

なんか、さっきよりも元気じゃなくなった気がする……。
もしかして、会いたくないの…かな?

「会いたくないの……?」
「…会いたい。けれど、アタシは……あの子と共にいる資格は、ないのよ………」
「依音…」

ほかの吸血鬼とおなじになったその目は、とても悲しそうに見える。
名古屋でごうりゅーしてから本人に聞いた話だけど、依音は真音の血を吸ってホントウの吸血鬼になった。
真音は、たとえ吸血鬼であっても依音は依音だって言ってくれた。
うれしいコトバだったのに、その後に叶えてあげられないことが起こってツラかった…って。

「…行かない、の?」
「あっ、そうだった……。えと、今度こそいってきまーすっ!」

すっごく心配だけど、きょうはどうしてもいかなくちゃいけない用事がある。
フェリドたちといっしょに、上位始祖会に名古屋のこととクルルのことをほーこくしなければならない。
…たぶん、フェリドはアタシたちを巻きこむつもりなんだろーなぁ。
もし上位始祖会からなにか下されたときの、連帯責任というかんじで。

「でも、フェリドらしいやりかただけどね……」

アタシもクローリーも、フェリドにたてつくことが出来ないのには深ーいりゆーがある。
アタシたちが吸血鬼になったきっかけは、大元を辿るとフェリドにある。
だから、たまーに反発はするけど。
アイツの言うことを聞かざるを得ない。
それが、アタシたちのカンケー。

「…いるの、かな。"ミスティねえさま"……」

上位始祖会には、第四位始祖でアタシの2番目の"あね"である"ミスティ・リッテ"がいる。
ミスティねえさまとは前までは仲よしだったんだけど、おたがいに吸血鬼になったきっかけを作った人物がべつで。
そのせいで、はばつで分かれなくちゃいけなくなって。
今では、口を聞くこともできない……。
そんな中で、モニターごしとはいえ会うことになるのは少しコワイ。
ミスティねえさまはだれよりもキリツをそんちょーする人だから、なにを言うか分からない。
でも、さいしゅーてきに判断を下すのは…クルルとおなじ第三位始祖でミスティねえさまの主であるレスト・カーと、第二位始祖でロシアを統治したウルド・ギールスになるんだと思う。

「うわぁ…。いきたくないなぁ……」

足どりがどんどんおもくなって、フェリドの屋敷についたのはそれから20分後だった。





「じゃ、これから上位始祖会に連絡を取るね♪」
「うっわ、凄いノリノリだねフェリド君」
「ん? 僕はいつでもこの調子だよ、クローリー君」
「嘘ばっかり」

フェリドの屋敷でフェリドたちとごうりゅーして、そこからいつも上位始祖会と連絡を取っている宮でんにやってきた。
クローリーの言うとおり、ホントウにノリノリだなぁ。
アタシやクローリー、クローリーの従者であるチェスやホーンのキモチも知らないで。
ううん、たぶん知っていてもっと楽しんでるのかも。
むかしからそうだからね、フェリドは。
なんて思っている内に、いつのまにか上位始祖会と連絡がつながっていた。
そして……

「っ、ミスティねえさま…………」

レストの後ろで、凛としたお姿で立っているミスティねえさまが目に映った。
そのときにフェリドがこっちを見て、イヤらしく口角をあげた。
やっぱり、アタシへのイヤがらせもあるんだ……。

「あれぇ〜、これはもう繋がってるのかな〜?」

フェリドはワザとらしくつながっているか確認して、めずらしくウルドに対してかしこまっている。
そのあとに話そうとしたところでニュクス・パルテが反ろんしてきたけど、レストがまるでフェリドのフォローに入るかのようにかのじょをいっしゅうした。
フェリド、そういうのを狙ってたんだね。

『それで? いったい何があった? フェリド・バートリー』
「それが実は、この日本で非常に困った驚きの事態が起きてしまいまして〜」

フェリドがそう言うと、ウルドが「結論を言え」と言ってきて。
まってましたと言わんばかりにもういちどニヤリと笑って……

『なんと。クルル・ツェペシ第三位始祖が人間と共謀して、《終わりのセラフ》の実験をしていたようです』

そのしゅんかん、上位始祖の人たちがみんな目を大きくあけておどろいた。
アタシもそれを知ったときはすごくおどろいたもんなぁ…なーんてかんがえてたら、

「私とエリザ・リッテ第八位始祖とクローリー・ユースフォード第十三位始祖は命を賭してクルル・ツェペシの拘束に成功しましたがぁ〜…」
「うっわぁ、こうなると思ってた……」

もはや、アタシとクローリーもいっしょにというのがテンプレみたいなものにさせられている。
アタシはそんなにクルルのこうそくに関わっていないのに。

『……。それは、本当なのですか。フェリド・バートリー第七位始祖』
「!!」

これまで一言もお話しされなかったミスティねえさまが、フェリドに問いかけている……。

「もちろんですよ、ミスティ・リッテ第四位始祖様。貴女の妹君には沢山協力をしてもらいましたからねぇ」
『…エリザ。彼が言っている事は、事実ですか?』
「あっ……」

いつ以来だろ、ミスティねえさまとこうやって会話を交わしたの……。

「…はい、ミスティ姉様。禁忌を犯したクルル・ツェペシの拘束に置きまして、彼らと共にその陰謀を食い止めました」
『……ご苦労様です』
「ありがとうございます…」

がんばってちゃんとしゃべったけど…ミスティねえさまとお話しするのは、どうしてもきんちょーする。
もし、これがウソだってバレちゃったら……

ドゴォッ!!!

「!! きた、の……!?」

背後からばくはつ音とばく風がして、ふりかえると…カベに大きな穴があいていた。
マズイ、このままだとサングィネムが……!

「フェリド・バートリー様!! 人間どもがこの宮殿にも来ます!! すぐに逃げてください!!」
「エリザ!!」
「依音……!!」

さっきまで元気がなかった依音が、ラクスくんといっしょにやってきた。

「…依音」
「何してんの! 早くここを逃げないと…エリザ?」
「もう、カクゴはきめた?」
「覚悟……。! まさか」
「そのまさか、だよ」

ここまできたらいくしかないと依音にさとした。
真音たちがいるとされる、とある小さな漁村に……。

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