懐かしいクビ 1

side:dream hero 5





「……嘘、だろ。三葉」

あんまりにも、一瞬の出来事だった。
いくら何でもおかしいだろ…?
だって、アイツはオレらの前に現れたばかりで……。
アイツが来た事を確認したと思ったら、三葉が斬られて−−−。
何で三葉なんだよ。
三葉は、何もしてねえだろ……。

(知人、斬っちゃいなよ)

「(! 閃珠丸……)」

ワケが分かんねえまま見上げていたら、《閃珠丸》が脳内で囁いてきた。

(アンタの大切な人、あの吸血鬼にやられたんだよ? これで怒らないなんて馬鹿なの?)
「(……そう、だよな)」
(怒った時程、普段では出し得ない力を発揮する。怒りなよ。それを抑えてたせいで、名古屋で清吾達と離れる事になった。怒る事なんて容易い事なんだから、今度は三葉まで失う事になるんだよ?)
「…いや、だ」

それだけは、スゲェ嫌だ…。
三葉までいなくなったら、オレは、オレは……!

「っ、テメェエエエッ!!!」
「! おっと…!」
「知人!!」
「知人君!?」

何だ、これ?
思ったよりも力が湧いてくる……。
これが俺の本当の力なのか?

(そうよ。アンタはいつも力を抑えてばかりで、普段はその半分で戦っている。だから、怒りでそれが一気に解放された。もっと怒りなよ? 感情の赴くままに……)
「う、おぉおおおおっ!!!」

閃珠丸の言った通りに怒りに身を任せると、吸血鬼はどんどん地面にめり込んでいく。
コイツって確か貴族のはずだよな?
1人でも、こんなに貴族に立ち向かえるもんなのか……?
このまま圧し切れば、三葉を助けられる!

「おおおおおっ!!」
「君、厄介な力を持ってたんだ…ね!!」
「っ!? ぐあっ!!」
「知人…っ!!?」

…ちきしょう、まだ力が足りねーのか。
あと一歩って所で弾かれ、体勢を取り直す間もなく地面に叩きつけられた。
今ので、3本ぐらい骨が折れたんだろうな……。

(どうしたの? もうギブアップするの?)
「る、せぇよ……。今日は、やたらと機嫌が良さそう…だなっ………ぐっ」
(そうだね。アンタがそろそろあたしに呑み込まれそうだからかしら)
「呑み、込まれる…?」

一体、どういう事だ……?

(そのまんまの意味よ。見てみなさい、アンタが倒れている間に他の皆は三葉を助けようともがいているのよ)
「……」

本当、だ…。
与一、暴走ギリギリまで鬼の力を使おうとしていてるのか……。
シノンも、真音も、シノアも、士方も、鳴海兄ちゃんも、…必死に、吸血鬼と交戦している。
それに比べて、オレは……。

「…《閃珠丸》」
(何?)
「どうやったら…あの吸血鬼に、勝てるんだ……?」
(言った通りよ。もう少し経ったら骨が治るから、その時にあたしに力を借りれば良いの)
「……そっ、か」

やっぱ、鬼の力を使うしかねぇんだよな……。
特殊能力を使っても勝てる気がしねぇ。
寧ろ、それが原因で負けるかもしれない。
それなら−−−。

(で、どうする?)
「………」

いっそ、オレだけ死んだ方が良い。

「あれ? 君まだ息してたんだ?良かった〜、君が死んだらフェリド君がうるさ「黙れ」
「…凄く怖い顔してるね」
「吸血鬼のくせにうるせぇよ」

やっと骨が元に戻ったところで立ち上がったオレは、一か八かで刀を突き出す。
案の定首に突き刺さらずに刃先を掴まれたけど、好都合になった。

「これでもう終わりなの?」
「…ンなわけ、ねぇよ!!」
「!!」

両腕にありったけの鬼呪を集め、思い切り圧しやる。
徐々に吸血鬼が後ろに退がってくのが手応えのある証だ。

「知人!! もう良い、やめろっ!! あたしはもうっ…」
「うるせえっ!! あの時言ったろ!! オレは、何があってもお前を守るって!!!」
「…!!」
「お前まで、いなくなってほしくねぇんだよ……」

オレが辛かった時、お前は何も言わずにオレの隣にいてくれた。
いつも通りでいてくれた。
お前がいたからオレはもっと強くなろうと思った。
…好きな気持ちを教えてくれたお前を守る為なら。

「だから…だから! 力をもっと寄越せよ!! 《閃珠丸》っ!!!」
「っ、知人っ……」

このままだと、優みたいになるかもしんねぇな……。
けど、後悔はしてない。

(さぁ、その一閃を解き放ちなさい)
「ああ…。全てを薙ぎ払え、"緋燕斬"!!!」

渾身の一撃を吸血鬼にぶつけた時、全身に激痛が走った気がした……。

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