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誕生日にあげたかったRE!雲雀さん短編(※倉庫化)
ふわり、ふわり。

どこからともなく薄桃色の花びらが舞い降りて来て、私の頬にはらりと落ちた。


「桜……」


そっと手にとって太陽にかざし、私は小さな声でそう呟く。
それをぎゅっと握り締めて、私は自分の手を胸の辺りに置いた。
目を閉じて、すぅ、と息を吸い込む。
瑞々しい春の匂いがして、ここに来てからもう1年がたったのかと、私はようやく実感する事ができた。
満開に咲き誇る桜を見ていると、私はあの人の事を思い出す。
昨年私がこの中学校に入学した時に、1人で桜の木を見上げていた人。
『風紀』と書かれた腕章を片腕につけて、何故か学ラン姿で佇んでいたその人。

この学校の風紀委員長であり、この街の秩序を誰よりも大切にしている彼−雲雀恭弥に、私は初めての恋をしてしまったのだった。





初めて桜の木の下で彼を見た時の印象は、「綺麗な人」だった。
紫がかった鋭い瞳が印象的で、それが純粋に綺麗だと思ったのだ。
後から同じクラスのツナ君に彼の事を放したら、「それ、もしかしなくてもヒバリさんの事だよね!?」ととても驚かれた記憶がある。
ツナ君曰く、雲雀さんは風紀委員長にして不良の頂点に君臨する中学生で、群れを嫌い、1人で行動している事が多いらしい。
また、戦闘能力が高く、群れている集団や強い相手を見つけると、容赦なく咬み殺すのだそうだ。


「だ、だからねなまえちゃん、ヒバリさんには極力近付かない方がいいよ!変な事したら咬み殺されるから……!」

「うん、ありがとうツナ君」


彼にはそう返事をしたものの、私は諦めるつもりなんて毛頭無かった。
その日の昼休み、私は購買で買ったメロンパンとオレンジジュースを抱えて1人屋上にやって来た。
ツナ君曰く、屋上は雲雀さんのお気に入りの場所の1つだという。
彼に会えるかどうかは分からないけど、私は彼の姿を視界の隅に入れられればそれで良かったのだ。
キィー、という心細い音とともに、屋上に繋がる扉を開ける。
ゆっくりと足を踏み出して、恐る恐る辺りを見回した。
……残念、誰もいないようだ。
でも、ここからは並盛の様子がよく見えて、いかにもこの街を愛する雲雀さんが気に入りそうな場所だと私は1人納得した。
フェンスに近付いてぺたりとその場に座り込むと、買って来たものを広げて1人で昼食を取り始める。


「何してるの」


その時、私がいるところよりも更に上の方から不機嫌そうな声が降って来た。
きょろきょろと視線を巡らせて、私は漸く声の主を見つける。
屋上の塔屋の上から私を見下ろすその人は、まさに私が探し求めていた人物だった。


「ここは僕以外立ち入り禁止だよ。早く出て行かないと咬み殺す」


雲雀さんはどこからともなくトンファーを取り出して私を睨みつける。
私は一瞬だけ怖気づいたものの、何とかその場に足を踏み留めて声を発した。


「ごめんなさい。でも、貴方の邪魔はしないので、ここにいさせてもらってもいいですか?」


私の発言に、雲雀さんは益々眉間に皺を寄せた。


「君、僕の言った事が理解できなかったの?僕は今、『ここには来るな』って言ったんだよ」

「それは重々理解しています。貴方が群れを嫌うのも知っています。だから、貴方の邪魔は一切しないつもりです。私は私で勝手にここにいます。……それでも、私はここにいちゃ駄目ですか?」


じっと彼の瞳を見つめる。
私には雲雀さんのような戦闘能力は一切ない。だから、ここで彼に攻撃されたら、一発で彼に咬み殺される。
それでも、可能性に懸けてみたかった。
だって私は、もっと雲雀さんの事を近くで見つめていたかったのだ。


「……ハァ」


先に折れたのは雲雀さんの方だった。
彼は大きく溜息を吐いた後、「好きにすれば?」と無愛想に呟いてそっぽを向いてしまった。
後ろから見た雲雀さんの髪のシルエットが可愛らしくて、それを見ただけでつい頬が緩んでしまう。


「ありがとう、雲雀さん」


私はそう礼を告げると、再びその場に座り込んで昼食を取り始めた。

それ以来、私は昼休みを屋上で過ごすようになった。
「雲雀さんの邪魔はしない」という約束をした以上、自分から彼に話し掛けた事は一度も無い。
私はただ、雲雀さんの事を見つめていられればそれだけで充分だったのだ。
そう思っていたはず、なのに。


『1-A みょうじなまえ。今すぐ応接室に来なよ』


6月に差し掛かったある日の昼休み、私は何故か雲雀さんに呼び出された。
今日は朝から雨が降っていて、屋上でお昼を食べるのは無理そうだ、と諦めていた矢先である。
呼び出しを聞いたツナ君は「なまえちゃんヒバリさんに何かしたの!?」と顔を青くし、一方で山本君は「ヒバリが女子の事呼び出すのって初めてじゃねーか?」と暢気に言いながら紙パックの牛乳をストローで啜っていた。
私はというと、雲雀さんに何か迷惑を掛けた記憶は無いし、彼の怒りに触れるような事をした覚えも無かったので、首を傾げながらも教室から飛び出す。
「なまえちゃん、気を付けてね」と声を掛けてくれたツナ君に礼を告げると、私は颯爽と応接室に向かった。
扉をコンコンと2回ノックし、「失礼します」と言って中に入る。


「やァ」


雲雀さんはチラリと私に目をやってから、すぐに視線を手元の書類に戻した。


「え、っと、私に何か用ですか?」

「別に」

「……え?」


一応それなりに勇気を出して質問したはずなのに、返って来た答えはとても呆気ないもので、私は思わず脱力してしまった。
じゃあ何で、この人は私の事を呼び出したんだ。
私の疑問に答えるかのように、雲雀さんはゆっくりと口を開く。


「君、今日はどこで昼休みを過ごすつもりだったの」

「えーっ、と……教室?」

「ふぅん。それなら、今日はここで過ごすといいよ」

「えっ!?」


流石にこの発言には耳を疑った。
だって、雲雀さんは誰よりも群れを嫌う人間だ。そんな彼が、わざわざ自分から人の事を誘うだなんて、天と地がひっくり返っても有り得ない。
もしかしたら今日はその内空から槍が降って来るのかも?
そこまで思考が行き着いた時、ガキンと耳元で鈍い音がした。
恐る恐る音のした方に目をやると、私の耳元スレスレの位置にトンファ―が突き刺さっている。
サァーッと、自分の顔から血の気が失せるのを感じた。


「君、今僕に対して失礼な事考えてたでしょ」

「ご、ごめんなさい!貴方がこうして私をここに招いてくれた事が意外だったので!」


慌ててそう弁解すると、「別に深い意味はないよ」と雲雀さんはさらりと言ってのけた。
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ここで力尽きました…。
私にはこの人の夢小説は書けない!と思いました。
というのも、原作の雲雀恭弥というキャラクターが好きだから、自分で彼を書く時はどうしても彼の本来のキャラクター性を崩したくないなと思ってしまって…そうなると彼の夢小説を書くのは極めて難しいなと思ったのです。
ですがせっかく2500字も書いたんだし…ということで、ここまでは掲載させていただいた次第です。
少しだけ、RE!で主題歌をよく担当されていたチェリブロさんの「桜ロック」を意識して書こうと思ったのですが、どう足掻いても悲恋にしか転がらないのでやめました。笑
この後少しずつ少しずつ距離を縮めて行く2人を書きたかったのですが…ぐぬぬ、難しいですね!



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