濃い香の煙が噎ぶほどに漂っている。
菊門のへりを撫でると僅かに空気が揺れた。
女性のほとのようだと言えば、また怒られるだろうか。何人もの男を咥えた証だと言わんばかりのそこは、少しつついただけで浅ましく吸い付いてくる。
「あまり、みないで」
「でも、もう欲しいんでしょう?」
物好きなとある城の殿は、美男子同士が交合う様を好むという。
その城から戦に関わる密書を奪うというのが今回の利吉の仕事であり、一人ではどうしようもないと辰弥に声をかけた。
彼を後ろから抱えて、大きく脚をあけた先には物好きの殿とその家臣が食い入るように見ている。
「お願い、です。お殿様…恥ずかしゅう、ございますので」
肩まで真っ赤にした彼の腰が揺れているのは、わざとではないのだろうか。
「恥ずかしいと言う割には、魔羅をそそり勃たせよって」
「好き者ですなあ」
「いやはや、何人咥え込んだのやら」
利吉の腕を掴む手に力が入る。何処までが演技なのか分からない。それ以上に利吉の中から暗いドロドロとした炎が身を焼きそうになる。
「ね、もう…お願い…いたします」
涙を堪えながら辰弥がこちらを見上げた。
「いれて…?」
消え入るような声で強請られて喉が鳴る。気が付けば押し倒して、菊門の先端に魔羅を擦り付けていた。
(利吉君、私はここで彼らを抑えるから、君は後で密書を)
飛んできた矢羽音に全てが演技なのかと少しばかり悔しい気持ちになる。それでも、あの男達に手を付けさせるのは本意ではない。
「っ…ぁん♡」
いつもより幾分も甘い声。中に入れてはいないのに、溶けるような嬌声に酩酊する。
「…っ!」
「…?あれ…お殿様、このお方、体調が悪いようで」
殿が目を細めてはあと息を吐いた。
「隣の部屋で休んでこい」
「…はい」
急いで場を去る。折角彼が用意してくれた機会だ。無下にすることはできない。
「…連れてくるんじゃなかった」
一人息を零して密書を探る。文机に置かれたままのそれを手に取り、中身を確認して急ぎ部屋に戻る。
「遅かったね」
襦袢を羽織ったまま退屈だと言わんばかりに欠伸をする辰弥の前には、先程まで会話をしていた殿や家臣たちが伏せっていた。
「寝ているだけだよ」
最初に香を炊こうと言い出したのは彼だった。眠りの作用があったのかと、彼の顔を見た。
「着物、着てください」
「ふふ、あの場で本当にするのかと思った」
妖艶に笑う彼が着てきた服に袖を通す。
「貴方の体を他の人に見せるだけでも嫌なんですよこっちは」
「今更だよ。君が知らないところで沢山使ってきたからね」
着替えを終えた彼が見慣れた黒を纏って出てきた。
「行こうか」
「ええ」
城を抜け、森の中を駈ける。学園までは距離がある。密書を届けるのなら早い方がいいが、腹の奥にある黒い火がどうにも消えない。
「こっち」
突然腕を引かれて転がり込んだのは廃屋だった。
「此処も、あなたの拠点ですか?」
「まあね。たまに他の忍も使ってるみたいだけど」
押し倒されて辰弥の顔を見上げる。
「そんな顔良い子には見せられないな」
「貴方は、平気なんですか。その身体を人の好きにさせて」
「私は元よりそうやって仕込まれてきた。今更だよ。まあ、此処で得る快楽を植え付けたのは君だから…責任は取ってもらわないとね」
辰弥が利吉の袴を解いて褌の合間から半分ほど熱を持った魔羅を取りだした。
「まさか…っ!」
躊躇いもなくぱくりと口の中に含まれた魔羅は、舌技と合わさってどんどんと子種を登らせていく。
「っ、たつみ、さ…も…!」
くちゅ、と粘り気のある水音と共に口から魔羅が出てくる。根元を締められて情けない声が上がった。
「あ、ぅ…ッ」
「もう、解れたしいいかな」
口淫をしながら後ろを弄っていたらしい。ぴとりと菊門に先端を当てて、彼は笑った。
「中途半端にされたのは、私も同じだからね…っ」
くぷくぷと彼の体重で内側に飲み込まれていく魔羅に、すぐに達しそうになるのをなんとか食い止める。
「は…っ」
「…ふふ、可愛い顔。いつもそんななら、いいのに」
彼の手が額から頬へと滑る。主導権を握られるのは抱かれた時を除いては初めてなような気がする。
「っ、動かしますよ…!」
「ダメだよ、今日は私が好きにする番だ」
とん、と胸を押されて仰向けに寝転がる。
「君は天井のシミでも、数えていればいい」
結局あれから夜が明けるまで睦み合ってしまった。
気がついた頃には日もかなり高く昇っていた。
「寝過ぎたね」
「…随分スッキリしてますね」
「まあ、好きにさせてもらったから」
にこりと微笑むこの人に、抱かれた訳でもないのに酷く鳴かされたような気がして深く息を吐く。
「たまにこうしてくれるなら君を抱くのも諦めてもいいよ」
「…何故私が諦めて欲しいと分かったんです」
「顔に書いてる。いつか君に使い物になら無くさせられそうだなあ」
何事もないように晴天の空に呟く彼に、そっと笑みを返した。
「ええ、私さえいればいい身体になればいいと思っていますからね」
目を細めてぞっとしたような表情を浮かべた彼の手を引く。
「急ぎますよ」
「はいはい」
学園へはここからはさほどかからないだろう。
掴んだ手を離し難くなってしまって、指を絡めて手を繋ぎ直した。
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