死が二人を別つまで

「時間とは残酷だね」

大人気だった頃の輝きを失い、すっかり大人しく衰えた元アイドルを見て、彼がポツリと溢した。
老いと権威ばかりを素肌に乗せて、はしたなく微笑んでいる元アイドルは、化粧では隠しきれない醜さに覆われてこちらに瞬きを寄越す。
若さを保つ秘訣とは、若さにしがみつかないことにあるのではないかと思う。この場合の若さとは、内面的なことだ。けれど内面というものは次第に外側に滲み出てくるのだ、必然的に。
小皺のひとつも見当たらない元アイドルに見てしまったのは、内面的な老いなのだろう。若く瑞々しかった女の子は下らない女に成り下がり、街で快活にはしゃいでいた男の子は若かりし自分を棚に上げ舌打ちをするしわくちゃの男に成り下がってしまった。

「うん、でもね、時間が癒してくれることだってあると思うの」

コトリと彼の肩に頭を置きながら言うと、彼は小さく息を吐いて微かに笑う。

「百年先もあなたといられるかわからないから、だからこそわたしは時間を止めたいとは思えない」

「ぼくと一緒にいたくない?」

「もう、茶化さないで」

「ごめん」

言葉とは逆に、全く悪びれない笑顔で私の顔を覗きこんだ彼につられて私も少しだけ笑った。
時間を止めたら、勿体ないでしょう。
百年先もずっと一緒にいられないなら、色んな瞬間を一緒に過ごしたい。他愛ないことばかりでもいい。悪びれない笑顔も、テレビに愚痴を吐きかける声も、コーヒーの熱さに跳び跳ねる肩も、煙草を捕まえる指先も、炬燵の中で駆け回る足も、不条理に愛を呟く唇も、ベッドの中でとろける目も、その奥で燃える炎も、穏やかに呼吸を作り出す胸も。全てを焼き付けたいの。たった一瞬を凍りつかせたら、それで終わってしまうじゃない。彼はいつでも輝いてる。だから勿体ないでしょう。

「だってね、わたしはたった一瞬のあなたを愛しているわけじゃないの、どんな瞬間も愛しいからこうして隣にいるのよ」

「…ねえ」

「なあに」

「ベッド行かない?」

「はあ!?」

脈絡を完全に無視した台詞に、思いきり首を捻って彼を見ると、自分の言葉を省みてその意味を理解したのかパッと口を押さえた。

「いやっ、そうじゃない!そうじゃなくて、ただ抱き合って寝たいだけだよ、朝まで」

「ああ、そういう…」

「そんな気分になったんだよ、ただ肌を触れ合わせて眠りたいんだ」

話題提供だけして御役御免になったテレビは無節操に流行りを取り上げてはしゃいでいる。
彼が照れ臭そうに言った意味が、なんとなくわかる気がした。笑うと少し下がる目尻とか、手持ち無沙汰に握ったり開いたりを繰り返す掌も、目の奥で輝く心も、全てが愛しい。

「まだ早いけど、シャワー浴びて寝ようか」

「うん」

変わらないでいて欲しい。けれど、彼の動く心も愛しいのだ。
ねえ、いつか老いさらばえても、その笑顔だけは変わらないでいてね。きっと、変わらないでいてね。私も変わらず、あなたを愛していたいと思うから。





(おしまい)

インスパイア兼リスペクト
:Stay Gold/宇多田ヒカル

珍しく幸せな感じの話になった
非常に綺麗な歌だと思います
題名の意味はまあ輝いていてね〜的な意味なんでしょうかね




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