だから君たちは違う人


「さびしくなるね」

 幼い頃、私の初めての友達が、遠くに引っ越す際に言った。涙に濡れた頬、でもそれでも笑いながら。私はその子の手を握りながら、呆然として、行かないでって泣いた。だって私は本当にさびしかったから。
 さびしいなんて、笑って言うなんて、嘘っぱちみたい。

「しばらく会ってなかったから、さびしかった」

 高校の時、違う学校に行った友達が言った。夕日に照らされて、微笑みながら。私は折角会えたのにまた別れるのが嫌で、日が暮れていくのを恨んでいた。だって私は本当にさびしかったから。
 日暮れで別れられるのにさびしいなんて、嘘っぱちみたい。

「彼が救ってくれたの」

 全てを分かち合い、全てを預け合ってきた友人が、そう言いながら彼氏を紹介してきたのは、その子が死すら思うほどの苦しみから抜け出した後だった。私は笑顔のひとつすら作れなくなって、神妙な顔でその顛末を聞いていた。

 さびしいなんて、友情なんて、嘘っぱちみたい。
 別に、付き合いたいわけじゃない。でも打ちのめされた。その子の幸せを祈っていた。今でも祈ってる。でも私の一番があなたであるように、あなたの一番になりたかった。だから打ちのめされた。
 私じゃだめなんだってわかったから。向けたのと同じだけの思いが返ってくるわけないんだって、こんなにもまざまざと見せつけられてしまったから。

「さびしくなるね」

 私が滅多に会えないような遠くに旅立つ日、全てを分かち合っていた友人が言った。涙なんか乾かして、笑いながら。

「元気でね」

 私は言わなかった。さびしい、なんて、笑いながら言えるわけがなかった。
 いつだって心が潰れてしまいそうだった。涙が止まらなくなりそうだった。私のひとつひとつの細胞がどんどんと死んでいく気にすらなった。それがさびしさよ。これは喪失よ。笑って耐えられるものなんて、最初から持ってなんかいない。笑って耐えられる喪失なんて、そんなのはこの世にはないの。

「離れていても友達だよね」

 泣きながら友達が言う。

「そんなの当たり前でしょう」

 私は笑いながらそう言った。おかしくてたまらなかった。そんな確認をしなくてはいけないほど、私は薄いものだったんだと気付いたから。

「本当に、さびしくなるね」

 まるで今までさびしいなんて感じたことがないように、友達は言った。私はずっと、あなたがいてもさびしかったのにね。あなたが笑うとさびしかった。心が潰れてしまいそうなほどさびしかった。

「……本当に、元気でね」

 私は言わない。あなたのさびしさが、わからないから。
 手を振る気にもなれない。あなたと別れるのも、分かち合っても分かり合えてなんかいなかったのも、さびしくてしかたない。さびしいなんて、笑って言うなんて、私たちの今まで嘘っぱちみたい。
 私は泣かないよ。私は泣かない。だって私は失われない、最初からいなかった。





(おしまい)




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