みんなみんな瓦落多


(写真になってしまえば、永遠だと思ったの、私のものだと思ったの、ずっとずっとずっと、変わらないまま閉じ込めておけると思ったの)

今にも消えそうな体の弱い少年、シジマを、カノコは愛していた。それはもう大層。自分だけのサナトリウムでも作って、そこに永遠に閉じ込めておきたいほどに。カノコにとって、シジマという存在はそれほどに強烈なものだったのだ。カノコ自身も驚くほどに。
シジマは貧弱で脆弱な少年だった。もうあと一年ももたないと、彼の主治医が無感動に告げる。
その日、シジマの母からそれを聞いたその日。カノコは有り金をかき集めてかき集めて、カメラを買いに走った。それからカノコはシジマの写真ばかりを撮った。空も花も動物も撮ることはせず、シジマという生き物ばかりを撮った。周りの人間もカノコの気持ちが何となくでもわかるのか、止めることはしなかった。
日に日に痩けていく頬を動かし、シジマが言う。

「カノコちゃん、外で遊んでおいで、きっと俺よりもうつくしいものがいっぱいあるよ」

堪らずカノコは返す。

「いいえシジマくん、あなたよりうつくしいものなんてないわ、例えあったとしたって、私はそれを知りたくなんてないのよ」

そこまで言われて、また追い出せるほどシジマは口がうまくはないので、仕方なくカノコのしたいように自分の写真を撮らせた。
カノコは必死だったのだ。
医師が命を救うために切ったり貼ったりするように、カノコは写真を撮ることで命を救おうとしていたのだ。あまりにも独り善がりで、救えはしないけれど、カノコは必死で、毎日毎日シジマの写真を撮る。

死の間際にシジマが言う。

「カノコちゃん、外を見てごらん、俺よりもうつくしいものがいっぱいあるよ、閉じ込められるものがいっぱいあるよ」

シジマはカノコの思いに気付いていた。
シジマをフィルムに閉じ込めることで、シジマの生をつなぎ止めようとしていたことに、気付いていた。
堪えることなど出来ずに、カノコが返す。

「ねえ私は間違っていたの?どうしてあなたは白くなるの?生きているあなたをどこかに閉じ込めておきたかっただけなのに、出来ないならこんなものは瓦落多だわ!」

優しく笑ったシジマが柔らかく返す。

「俺も死んだら瓦落多になるよ、だからどうか、カノコちゃん、きみの宝箱に入れておいて」


やがて、シジマは白くなってしまった。


(写真になっても、結局どこにもなかったの、永遠なんて嘘だったの、もうにどとないのよ、もうにどとないのよ、ずっとずっとずっともどってこないの、閉じ込めたはずなのにもっとずっとかなしいの)






(おしまい)

写真撮って、それを現像して、そしてそれを繋ぎ止められたらいいよね
Canonに全財産つぎこんでもいい




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