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メールが届きました。


 某日 歌舞伎町 何処ぞのアパート内

 椅子の上で体育座りをするように手で足を抱え込んで座りながらパソコンを弄っているとピロンと画面に表示された。

 また迷惑メールの類だろうなと思いながらそれを開いてみると面白そうなことが書かれていて、ニヤリと笑みを浮かべるとスマホを取り出し米花町にいるキョウダイに電話を掛けた。

 数コール鳴った後、電話に出たキョウダイに顔を輝かせると、機嫌良く話す。


「よー、キョウダイ。お前のことだから無視すると思ったけど出てくれて嬉しいぜー」

『ーーー?ーーーーー』

「まー、そう怒んなって。実はオレんとこに面白そーな仕事が来たんだけどよぉ、お前もコッチに来てやんねぇか?」

『ーーーーー』

「んなつれねぇこと言うなよー。オレとお前の仲じゃん?それに暴力団の抗争が始まったらしくてね、その組員ばかりが目ン玉を抉り取られて死体で発見される連続殺人事件、お前にもキョーリョクしろーって連絡くんじゃねぇの?」

『ーーーーー?』

「あ?誰からって、オレらのpadre(パードレ)に決まってんじゃぁん?それともお前のだ〜いすきなゴシュジンサマとかぁ?」

 ケラケラと笑いながらおちょくればキョウダイは深いため息をついてからまだ連絡ないからヤダ、それとあの人を馬鹿にするようなら殺すと言って、電話を切った。
 プー、プー、と音を鳴らす電話を笑いながら閉じる。


「チェッ、まぁたフラレちった」


 ボヤキながらスマホを後ろにあるベッドにポイと放り投げ届いたメールを読んでいく。

 一般人から届いた仕事の依頼。
 一般からのメールだったから面白そうと電話では言ったがよくよく読んでいけば内容は在り来たりでつまらないものだった。
 なんでもこの依頼人、殺された姉の復讐を果たしたいようだがここ最近、病気を患い現在入院中で動くことが出来ず、病状も悪化していってるとのこと。
 しかし、大人しくしているのは死んでも嫌でネットを駆使し、色んな所から集めた情報をもとに俺へと辿り着いたようで依頼してきた。


「あー、復讐の依頼ねぇ……」


 色んな依頼をこなしてきたから分かるがこういった依頼は大抵が未払いで終わってしまう。
 なんでって?そんなの依頼人が警察に捕まるからに決まってんじゃん。
 そんで俺もなんかの罪で捕まりそうになるのだ。なんだっけ、ほじょ罪?とかきょーさ?ん?ぎょーざだっけ?まぁそんな感じ。


「ショージキ、乗り気しねぇなぁぁああ」


 ガシガシと乱暴に頭を掻けばブチブチと髪が千切れる音が聞こえたが、そこまで身嗜みに気を遣ってるわけでもないのでほっとく。

 しばらく画面を睨みつけていたが、他に仕事もないし飽きるか別の死事が入れば止めればいい。
 そう思った俺は依頼を受けると返信した。

 

 後日、どこかの病室で弱々しくもギラギラと憎悪に燃やす目と面倒くさそうに暗く澱みつつも愉快そうに笑みを浮かべる目をした男が二人、握手した。


「はじめまして、俺がアンタに依頼したーーーだ」

「ドーモ、俺のことはタクマとでも読んでくれや」

  

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