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2022/06/04(Sat)

無題

自分でもすっかり忘れていたドルパロプサマーの小話が発掘されたのでとりあえずここの下の方に保管しておきます。その内ちゃんとSSとして載せるけど一時避難。まじで忘れてたからびっくりした。
私はマーベディが大好きだけどマーはベディ以外には全面的に受けだと考えているからマー受けも普通に好き。前の環境だとマ受けはちょっと載せにくくて自重してたけどその必要がなくなった為に好き勝手やってます。

ガウェベディのやつ、続き書きたい気持ちはあってちょいちょいいじってるんだけど ベディさんを男にして書くか女にして書くかがマジで未だに決められなくて全然進められない(アホ)


某礼装ドルパロのプサマー

 応募用紙は姉が勝手に投函していた。
「書類審査を通過しました。次はオーディション審査だそうです。……嬉しそうではありませんね? 確かに貴方なら書類通過くらい当然。一々喜ぶほどのことではありませんね」と言われた時も、何の事だか分からずただ困惑していただけだった。姉は昔から独断先行が過ぎる人だったけれど、まさか本人に何の断りもなくアイドル事務所に書類を送るなんて想像もしていなかった。
 ていうか姉さん、アイドルとか興味あったんだ。
 
「六番、アーサー・ペンドラゴンです。……応募動機は、姉に勝手に書類を送られて……ああ、やっぱりこういう人多いんですね……。部活は中学から剣道部です。趣味ですか? 部活以外は特に……。あ、料理かな。簡単なものしか作れないけど。得意料理は……目玉焼きとか」
 この時マーリンは一番左端の席に座っていた。特に質問はされなかったけど、驚くほどに美しかったのでよく覚えている。僕のぐだぐだな受け答えに、彼は終始楽しげに口端を持ち上げていた。
「質問なんていらなかったさ。書類の時点でそんな気がしていたし、実物を見て確信した。――今回はキミしかいないって」
 後々、そう語ってくれた。
 
 事務所への所属が決まると、マーリンはすぐに僕の家にやってきた。手土産を持ち、つつがなく名乗り、名刺を渡し、契約書を交わす。マーリンのとんでもない美貌に両親は面食らい、どちらかと言えば好意に近い感情を持ったようだったが、姉は何故か彼が気に食わないらしかった。
「可愛いアーサー。アレと会う時は常にナイフを隠し持っておきなさい。不審な動きを見せたら躊躇わずに刺すのです」
「銃刀法違反だよ、姉さん……」
 
 ◆
 
 僕のキャメロット所属が決まってからはマーリンはプロデューサー業の八割を代理者に任せるようになった。そして実質、彼は僕のマネージャーになってくれた。尤もこの辺の事情を知ったのはずっと後になってからのことだ。当時の僕は芸能界については右も左も分からなかった。
「私は輝くものを見るのが好きなんだ。確かに私自身も反則級の美形だろう。でも自分自身が輝くより、私は輝く誰かを見つけ出して育てたい。そっちの方がずっと楽しいと感じるんだ」
 そう語ったマーリンを、信頼に足ると僕は感じた。多分、この時にはもう彼に惹かれていた。
 僕が殆ど嫌な思いをせずにデビューまで漕ぎ着けられたのは百パーセント彼のお陰だろう。勉強もきちんとさせてもらえたし、日付が変わる前には家に返して貰えた。一滴の酒の味も女性の体の味も知らないまま、僕は二十回目の誕生日を迎えて成人した。「あの酒好き女好きのマーリンと一緒にいて!? 有り得ない!!」と驚かれたりするけれど、これは紛れもない事実である。
 代わりに誕生日の翌日には、もう制限は無しだ! と言わんばかりに泊まりがけの仕事が入っていたから彼らしさに苦笑いしてしまった。宿泊先の高層ホテルは夜景がきれいで、それは今でこそ見慣れた光景になってしまったけれど、当時はかなり感動した。夜が深まってきた頃に隣の部屋からやって来たマーリンは「成人祝いに一本」と目配せをしてシャンパンを開けた。後の記憶はない。前後不覚に酔い果てた僕は朝になるとマーリンと同じベッドで眠っていて、互いに裸だった。
「もしかして変なモノ混じったお酒だった?」
「まさか。ボクはキミに不確かな物を飲ませたりなんてしないよ。度数も低いものを選んだんだけど、キミは結構酔いやすい体質みたいだね。酒絡みの仕事は今後一切NGにしよう」
「……あのさ。ええと、ごめん。何も覚えてないんだけど……その……」
「ああ――ボクが下だったよ。今日仕事だってのにキミにあれこれするわけにいかないだろう。それにキミみたいな子にあんなに情熱的に口説かれたら、流石のボクだって抱かれてもいいかなって気分になるとも」
「…………僕、何を言ったの?」
「本当に覚えてないんだねぇ……いっぱいサービスしてあげたのに、勿体ない」
 
 この日の撮影はミスの連続で散々だった。
 
 ◆
 
 その広告を見たのは街中だった。女性向けに展開されるアフタヌーンティーの広告だったらしいけれど、それにしては人物が前に出すぎていた。何を――いや、誰をプッシュしたくてこうなったのかは明白だった。
 僕はスマホを取り出し検索を掛けた。マーリンと一緒に映っている男は最近うちの事務所に所属したオベロン・ヴォーティガーン。web記事はどれもオベロンにフォーカスが当たり、マーリンの方はオベロンと同事務所に所属しているという情報が最後にささやかに記載されているだけだった。
 
「――これ、どういうわけ?」
 同棲しているマンションの部屋に戻った僕は壁際までマーリンを追い詰めてスマホ画面を突き出して見せた。「わー、本物の壁ドンだぁ!」と不自然に明るい声を出したのを黙殺すると、彼は気まずそうに視線を逸らす。
「……先日、ラスベガスで結構な額を負けこんでしまったところから話は始まるのだけれど……。これは流石にヤバいな? ちょっとバイトでもしようかな〜? と思って社長と掛け合ってみたら、この仕事を提案されて……。ほら、ボクはキミのデビューの時も一緒にステージに立ってるだろう? そういうノリだよ。引き立て役だ」
「どうして黙ってたの?」
「だってアーサー、怒るじゃないか!」
「当たり前だろ! ギャンブルも大損も正直どうでもいいよ! けど君には……マーリンには、僕だけのマーリンでいて欲しかったというか……」
「……そこなの? キミ、嫉妬とかするんだ」
「……僕だって人間だし……」
 改めて言われると自分でも恥ずかしくなって、ふてくされた顔のままそっぽを向く。僕と壁に挟まれているマーリンは今度は心からの笑い声をあげて手を伸ばし「キミは本当に可愛いなぁ」と僕の頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。やめてよ、と言葉では言ったけれど、僕はそれを拒まない。


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