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2025/08/31(Sun)

無題

使わないかも知れないからタキシャカの冒頭部分のカフェタキを供養する。使えたら使うけど。テイストとしてはホラーだけど内容が子供騙し過ぎて別に怖くないと思う。ざかざか書いただけの下書きだから誤字とかなんか変なとこもあると思う。



◆不完全性定理

 
「引き返して下さい、タキオンさん……。今日は、ここに立ち入っては……いけません……」
 
 旧理科準備室の前に黒い影が立っていると思ったけれど、それは案の定マンハッタンカフェだった。彼女の長い黒髪の隙間から覗く金色の目が今日は妙にギラついている。また、何らかの不測の事態があっても即対処しようとしているかのように、彼女の表情や体勢には強い緊張感があった。カフェの体質を知っていて、尚且つ一般的な理解力を持っている普通のウマ娘であれば、カフェの言う通りに即引き返しただろう。
 だがアグネスタキオンは残念ながら並みのウマ娘ではなかった。制服も夏仕様に切り替わっているというのに今日の離れ棟の廊下はやたら肌寒く、暑さにも寒さにも弱いタキオンは二連続で「くしゅん! はくちゅん!」とくしゃみをする。明らかに何かがおかしかったが、特に気にする様子はなく、
「おいおい、そんな勝手が許されると思っているのかいカフェ! 実験はレースと同じで時間との戦いなんだぞ、今日中に終わらせないとまた一からの工程になってしまう作業がどれだけあると思っているんだい!? そういう大事なことはせめて前日には伝えておいてくれないと!」
 と普通にクレームを入れ始めた。カフェは「本当にあなたはブレませんよね」と心底ダルそうに感想を述べると「……とにかく、駄目ですから……」と続けて旧理科準備室の中に消えた。
 勿論タキオンはすぐにカフェを追った。「せめて冷蔵庫の中の試薬だけでも回収させて欲しいねぇ! 十秒、いや十五秒あれば済むから!!」とごねて扉に手を掛けた。
 扉は開かない。
 揺することも出来ない。
 塗り固められているかのように、部屋の中が真空状態にでもなってしまったかのように、空間が切り離されているかのように、びくともしなかった。
 ぐぬぬぬ、と唸りながら扉と格闘していたタキオンは十秒程で無駄を悟ってぱっと手を離した。全くカフェは協調性に欠けるねぇとため息をつき、軽やかに踵を返す。
 タキオンが三歩ほど歩いたところで――――ぴったりと閉じているはずの旧理科準備室の扉の隙間から、半透明のもやの様な物がゆらりと立ち昇った。程なくして少女の腕に似た形態に固まったそれは、タキオンの方に向けて少しずつ伸びていく。ずるずる、ずるずる、と。白い手とタキオンの距離がどんどん詰まっていく。床を這っていた白い手が、タキオンの足首を掴もうと指を持ち上げた。だが、稲妻のような速さで後方から伸びてきた黒い影がそれを阻む。やはり少女の腕のような形をしているそれに押さえつけられると、白い腕は煙のように掻き消えた。黒い手もほぼ同時にふつりと姿を消す。

 ふと、タキオンは旧理科準備室を振り返った。
 しんと静まり返った廊下がいつも通りに伸びていた。
 何となく「……カフェ?」と呼んでみたが返事はない。
 (実際にはカフェでもお友達でもないものが返事をしたが、その声は半ばで不自然に途切れた。とはいえ霊感のないタキオンにはそもそも何も聞こえておらず)彼女は今度こそ振り返らずに教室に戻る。

◆個人的に気に入ってるのはダルそうに返事するカフェのとこ。


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