(不二周助)(不二→→主)


「みょうじさん」
「…はい」
「僕は君が好きなんだ」
「…あの、ごめんなさい」

そのやり取りは何度目なのだろうか

距離が近い彼は平然と言葉を続ける

「付き合いたい」
「ごめんなさい」

 今年になって何度目かもわからないが再び頭を下げた
こんなことが始まったのは、二ヶ月前。
三年生最後の夏が終わった時。多くの部活は大会が終わり、一息ついたところ。そんな時に急に呼び出され、告白された
 別に嫌というわけではない。しかしお相手があの不二くんだ。色々と理由はあるが、単純にあまり彼を知らなかった私は普通にお断りした。あと関わり薄かったのになんで急にっていうのもありました。
友達というかただのクラスメイトとしか思っていなかったし…。全然話さなかったし、テニス部に興味もなかったので知らないのは本当だ。
その時は確か「そっか、ごめんね」という言葉で終わった気がする。複雑な心境だし、混乱していたので正直その言葉以外聞けていなかったのだ。
今思えば何かを言っていたのにそれに対して何も言わなかったから現状こうなってしまったのでは、と過去の自分に拳骨を喰らわしたい。

 そんな事件の翌日から彼は急に距離が近くなった。
 急に朝の挨拶をしてきたり、帰りにもするようになった。挨拶だけならまだしも、顔を近づけてきてからだったり、わざわざ近づいてから何かをするのだ。非常に距離が近い。親友だってわざわざこんな近づかない。いないから知らないけれど……じゃなくて。
授業だってペアやグループを組む時、不二くんが入ってくる機会が増えた。唯一の救いは座席が少し離れていることだろう。視線は感じる時が度々あるが

 一ヶ月経つ頃には、周りに人がいない時は、耳元で「好きだよ」と囁くようになった。
もちろんやめて、と断ったが嘘じゃないよ、と続けられた。この時点で強く言い切れない私も私だと思う。

 今は周りにバレていないからいいものの、そのうちみんながいる面前で口に出すのではないかと内心は中々に焦っている。しかも彼に想いを馳せている人たちは異変に気がついたのか、疑いの眼差しを向けられている気がする。怖すぎる。

「不二くん」
「周助でいいよ。どうしたの?」
「あの、断ったはず、なんですが何故…その…続けているのか」

 日誌を書くため、放課後二人で教室に残った
彼は黒板や机を整備し、私は日誌を記入している。

「仕方ないよ。僕は君が好きなんだから」
「……」
「諦めないよ」
「…えっ……」
「僕、諦め悪いんだ」

 驚いて彼を見ると、口元に笑みを浮かべた彼がこちらを見つめていた

折れるのが早いか
諦めるのが早いか

 少なくとも、この状態がまだ続くことだけはハッキリしている


ー膠着状態ー

状況を打破するのは一体何なのか



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Hello,dust