「何か言い訳があるなら聞いてやる」
「保健室に行ってました」
「ほう。追試は決定しているが今回の授業には出ていた、とヒナから聞いたが。今度はおれの授業をサボりたくなったと」
「違います違います本当にクザン先生と話してたら授業が始まっていました本当です信じてくださいサボるなんて滅相もないです本当に」
「クザン…?またサボりか…まァ、お前がおれの授業に遅刻したのは初めてだからな。今回はそういう事にしておいてやろう」
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」
「体育館10周だ」
「え」
「素直に謝罪した事に免じて半分に減らしてやったんだが…20周がいいか?」
「行きます行きます今すぐ行きます」
「終わったら適当にその辺のチームに混ざれ」
「はい!!はい…」
自己ベスト更新の勢いでジャージに着替えてマッハで体育館へ移動したわけだけど。まあ当然ながら体育館の入口で、ルッチ先生が仁王立ちで迎えてくださいました。土下座でぶんぶんと頭を振りながら謝罪したというのに結局ペナルティ有りである。まったく血も涙もない先生だと心の中でぶつぶつ言ったところで、ルッチ先生からの鋭い視線を感じたので走る事に専念しようと思う。
「なんだなまえ、今来たのか!?何周するんだ、元気だなー!」
「いやどこから見ても元気じゃないよね。あと8周」
「8周かー!よし、おれも走るぞ!」
「ルフィはバスケに戻りなよ…ローが睨んでるよローが」
「ん?トラ男?ほんとだ!おーいトラ男ー!おれ、なまえが1人で走ってて寂しそうだから一緒に走るぞー!ちょっと待ってろ!」
「ルフィ大声やめて。すごく可哀想なものを見る目でローが見てくる」
ルッチ先生がこっちを見たので何を言われるかと思ったが、ルフィが一緒に走っている事に関しては先生は別に気にしていないようだ。よかった。ただしローやナミから地味に突き刺さる哀れみの目からは逃れられなかった。頼むからルフィ静かに走って…と念じながら(途中からルフィに腕を引かれて引き摺られるようにして)何とか走り切り、息をととのえようとしゃがみ込むと、間髪容れずに先生から「さっさとチームに混ざれ」との命が下された。それと同時にナミとボニーが手招きをしていたので、そのチームに混ざる事にした。
「アンタどこ行ってたのよ。数学のあと、体育一緒に行こうと思って振り向いたらもう居なかったんだもの」
「探したんだぞ?トイレとか」
「ごめん、保健室行ってた」
「ああ、そういえばなまえは数学の授業は必ず保健室に居たわね。ドクトリーヌ驚いてたでしょ」
「うん…明日は豪雨だって言われた」
「だろうな。ウチ明日は傘持ってこよ」
「ボニーたまに酷いよね」
3人でパス回しをしながら話していると、目の前のコートの試合が終わったらしくブザーが鳴った。次がちょうど私達の試合らしい。まだ息すらととのってないのに容赦がない。前半後半それぞれ5分ずつのミニゲームでよかった。男子側のコートでは、今まさにルフィがボールを蹴って「お前はバスケでボールを蹴るのはダメだって事も分からないのか」とローに怒られていた。
「なまえ、ちゃんとパス取れよな」
「出来ればナミからパス欲しい」
「なんでだよ!」
「ボニーのパス強いから絶対手が折れるし顔面に飛んでくる…」
「えー!普通に投げてんのに!」
「ボニーの普通怖すぎるよ」
試合開始のブザーが鳴って整列する。相手チームの子はなかなか背が高い。そして足も長い…あれ、よく見たら…この水色の髪、
「ビビ」
「こんにちは、なまえさん」
「あんた今気付いたの、なまえ」
「えっナミなんでビビがいるの?」
「今日の体育は隣のクラスと合同って昨日言っておいたじゃない。カヤやコビー達も居るわよ。カヤは見学だけど」
「あ、本当だ…おーい、カヤー!」
「ふふ。頑張ってね!応援してるわ」
「かわいい」
カヤの天使の微笑みで応援を受けた今の私は、誰にも負ける気がしない。そう…例え私がマークしなければならない相手が、学年の女子で一番と言っても過言ではないくらい体格の良い、女子柔道部の期待の星・スイトピーでも。
「なまえ!授業のミニゲームとはいえ試合!本気でかかってきなさいの巻!」
「あっやっぱり無理かも…」
「ちょっとなまえ!負けたら許さないわよ!」
「ナミさんスイトピーのマークはちょっと厳しいです」
「なまえー!!」
「げっ、ちょっ…普通今パス寄越す!?」
ボニーからの強烈なパスを何とか受け止め、ナミがゴール下まで走っている事を確認する。ビビが付いてるけどナミなら決めてくれるはず。しかし私の前にはスイトピーという高い高い壁がある。
「も、もうどうにでもなれ!何とか取ってねナミ!」
「!!ちょっと!ちゃんと前見て投げなさい!!」
そんなナミの声が耳に届いたのは、私の手からボールが離れてからだった。とにかく思いきり投げないとスイトピーに捕まる!と判断した私は、文字通りとにかくナミの居る方向へ思いきり投げた…つもりだった。
なんてこったい
「良い度胸だな、なまえ」
「すみません申し訳ありません本当にすみません悪気はなかったんですただパスを何とか通そうとしただけなんです本当なんです信じてください」
「体育館30周が終わったら教室に戻っていい。次の授業の担当教師にはおれから伝えておく」
「さ、さんじゅ…」
「不満か」
「いえいえいえいえ行ってきます行ってきます!!!」
ルッチ先生の後頭部へ思いきりパスをした私は、本日2度目のペナルティを食らってコートを去る事になった。そしてローとナミからこの授業で2度目の哀れみの目を向けられたのである。
「なんだ、なまえはまた走らされてんのか!?」
「ルフィ今度は一緒に走ってくれないの」
「30は嫌だ!!」
「ですよね…」
残り29周。
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