全員総出で捜索したところ、1つ分かった事がある。どうやら彼女は、おれが外へ出たのを確認した後に仲間の手により部屋へ戻されたが、その後我慢出来ずに部屋を飛び出していたらしい。おれ達が乗った船から、彼女が落としたであろうピアスが見つかった。しかし、船のどこにも愛しい彼女の姿は無い。つまり、
「出かけた先の島で落としてきちゃったみたい」
コアラが冷や汗を流しながら呟いた言葉で確信に変わる。ついてきてしまっていたのだ。しかし同じ船に乗っていた彼女に誰も気付かないとは…あいつめ。随分とかくれんぼが上手くなったらしい。
「おれが探しに…」
「だめ!ドラゴンさんから新しい指令だよ、サボくん!なまえ探しは私達に任せてキミは早く行って!」
「……………」
「……参謀総長殿?」
「…はい……」
おれは調書を片手に、泣く泣く革命軍本部を後にした。
「それにしてもなまえ、どこ行っちゃったんだろう」
「腹空かせてねェかな。よく食うもんな」
「……落ちてるものとか食べてないといいけど」
「…コアラ、なまえちゃんを犬か何かだと思ってないか?」
ーーーーー
革命軍本部で騒ぎが起きている頃。
私はというと、見知らぬ島で一人ぽつんと立ち尽くしている。船が停まったのを確認し、おそるおそる船から降り、サボ達はどこへ行ったのかと島の中をうろうろしていた。実は私は、ドラゴンさんに拾われて革命軍本部に身を置く事になってからというもの、散歩や簡単な買い物以外でろくに外に出た事がない(正確には、心配性な恋人様が私の身を案じて、自分が一緒に出られる時でないとなかなか遠出を許してくれない)。そんな訳で、一人で外に出る事自体が久々で…何と言うか、テンションが上がってしまったのだ。初めてたった一人でレストランで食事をし、外泊などしてみた私は、見事に迎えの船に乗り損ねたのである。ちなみに本当に一人ぼっちになったので再確認するが、私は組織内でほんのちょっぴり護身術を教えてもらった程度の非戦闘員だ。
「ど、どうしよう」
さらに再確認するが、組織内で何もせず置いてもらっているなんて事はなく、一応お掃除や食事のお手伝い、簡単な書類を作ったり…等で働いている。そのためお金が無いわけではなく、昨日も久しぶりの外出に気を良くして少々お高めのワンピースと、繊細な飾りのついたサンダルなんかを買っている。よって身なりも悪くはない。という事は。
「どうしたお嬢ちゃん、こんな所で一人で」
「おれ達がお茶にでも付き合おうかァ」
……こういう事である。あまりにベタすぎる展開に「キャー」等という可愛らしい悲鳴も出ない。しかし体格の良い見知らぬ男に囲まれれば、身は竦む。助けてサボ!と叫びたいところだがサボはもうこの島には居ないだろう。どうしたものか。見るからに下っ端臭の漂う男達だが、自分の護身術レベルで勝てる相手ではないのは分かる。じりじりと縮められる相手との距離に後ずさりながら考えていると、急に男達がバタバタと音を立てて倒れた。
「な、なんで急に…」
「あ!お前大丈夫か?何もされてねェか?」
「は、はい…あの、ありがとうございます…!」
「いいよ、気にすんな」
どうやら倒してくれたのはこの人らしい、手を出さずに倒すだなんてきっとすごく強い人なんだろう。お礼を言って顔を上げると、そこには一方的に知った顔があった。麦わら帽子に、目の下の傷。ニッと笑う精悍な顔つき。間違いない。
「あの」
「ん?まだ何かあんのか?」
「ルフィくん、ですか?」
大きな目を不思議そうに瞬かせた彼は、なんでおれの名前知ってんだ?と首を傾げた。サボからいつも話(大体は幼少期の)を聞いていると告げれば、顔を輝かせて私の手を掴んだ。
「お前、サボの知り合いなのか!」
「う、うん、でも迷子になってしまって」
「じゃあ今はサボ居ねェのか?」
「うん…帰ろうにも船も無くて…」
「なんだ、そんならおれの船に来いよ!」
「えっ、えぇえ!?」
物凄い早さで引き摺られるように走って数十秒。私はルフィくんの乗る船、サウザンドサニー号の前に居た。彼は私を抱えて船の上へと腕を伸ばし、一瞬で甲板へ上がった。の…伸びた、飛んだ、死ぬかと思った…!
「ちょっとルフィ!誰その子!」
「サボの知り合いだ!」
「サボって…あんたのお兄さんで革命軍の…?」
「おう!そのサボだ!」
甲板は芝生になっていて、着地は想像していたよりも痛くなかった。船番をしていたのだろう綺麗なお姉さん達が驚いてこちらを見ている。きっと手配書で見た、ナミさん、で合っているはずだ。あそこで寝ているのがゾロさん、だろうか。私達が甲板へ着地した音で、船内からぞろぞろと仲間の人が出てくる。
…そういえば、私が皆さんを知っているだけで自分が名乗っていなかった。
「なまえ、といいます。その、お恥ずかしい事にサボとはぐれてしまったというか何と言うかかくかくしかじか…」
「まあ、あなたは…」
「…!!ロビンさーん!」
そうだ、麦わらの一味といえばこの人が居た。一時期お世話になったロビンさん。あまり外へ出ずに退屈していた私に、色んな物語や仲間の皆さんの話をして、一緒にお茶を飲んでくれた優しいお姉さんだ。今も私を抱き止めて、皆さんに私を紹介してくれている。ロビンさんからの紹介のおかげで、ルフィくん以外からの警戒は解かれたようだ。手配書と違って整った顔立ちをしていたコックさんが、ハートを散らしながらぐるぐると回ってティーセットを用意してくれた。
「なるほど、サボとはぐれてしまったのね」
「ロビンさん…私きっと殺されます…」
「あら、彼は大切な恋人を家出や迷子を理由に殺したりなんかしないわ」
「くすくす笑いながらおっしゃいますが…サボは怒ると結構怖いんですよ…」
「ふふ…大丈夫よ、怒っているとは思うけれど」
「なまえ…おれはわかるぞ、サボは怒ると結構怖いよな」
「ひぃ…」
ロビンさんが背中を撫でてくれる反対側から、ルフィくんが顔を青くしながら肩をポンッと叩いてくる。私が小さく悲鳴を漏らすと、怖がらせないの!とナミさんがルフィくんの頭を殴った。ぷくりと大きなたんこぶが膨れ上がり、あんなに強いルフィくんが一撃で地に伏した。
「…とりあえず、連絡を入れたらどうかしら」
「えっ」
「…もしかして…電伝虫も持たずに飛び出したの?」
「…………えへ……」
「………」
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