ウチは今かなり困ってる。それはもう困ってる。大遅刻した上に授業中に堂々と早弁をしていたせいで大量のパンが没収された。スモーカーからは昼休みまで絶対に返さないと言われた。ウチよりだいぶ後ろの席に居るなまえへと視線で訴えると、何も持ってないからねと口パクで返された。前に向き直って教壇に立つスモーカーを睨むが、パンが返ってくる気配は無い。ぐうぐうと鳴り続ける腹。
「ボニーちゃん、そんなにお腹空いてるのかい」
「サンジ、弁当くれ」
「おれのまで没収されちゃうよ」
ウチの腹の音を聞いてサンジが声をかけてきたけれど、弁当はくれないようだ。するとサンジの前の席のゾロが、腹の音が煩くて眠れやしないとお握りを1つ投げて寄越した。…おかか。
「なあコレくれんの?」
「ああ」
「お前バカ助なのにいい奴だな」
「…返せ」
「もう食った」
「はァ!?」
コンビニお握りなんて一口で終わりだ。ぺろりと唇を舐めて完食。それよりお前はウチにお握り寄越してよかったのかと聞いたら、ブシはくわねどタカヨージ?なんだと。何だそりゃ。意味が分からない。何かっこつけてんだクソマリモ、とサンジがゾロの椅子を蹴ったけれど、このバカ助はおやすみ3秒どころか一瞬で眠りに就いていた。そして再び鳴り始めるウチの腹。
「あー…腹減った」
「ボニー…テメェはおれの授業を何度邪魔したら気が済むんだ」
「邪魔した覚えはねェけど」
「その腹だよ!食っててもバクバクうるせェが食ってなくてもうるせェな!」
ウチからパンを取り上げておいて何を言ってるのか。食ってなきゃ腹が鳴るに決まってる。
「なまえ何かくれないかなー」
斜め後ろをもう一度振り向くと、なまえが小さめのペロペロキャンディーを口に含んでいるのが見えた。隣の席のルフィも同じキャンディーを舐めている。くるくると渦を巻いた模様の水色やピンクが甘くて美味そうだ。あいつ、何も持ってないなんて嘘ついたな!!!メールしてやる。
た、す、け、…あ、電池切れた
ちょっと大袈裟に「助けて」とか送ったら分けてくれるかなーなんて思ったけれどその前に充電が切れた。そういや昨日充電して寝るのを忘れてた気がする(後で教室のコンセントを拝借してちょっくら充電するか)。悔しい。なまえを見ると、本文は中途半端だがギリギリ送信ボタンを押していたらしく、中途半端なメールが届いたらしいなまえがププーッと吹き出してこっちを見て笑っていた。笑っているなまえに気付いたルフィがメールを見せてもらい、まったく同じ顔で口を押さえてププーッと笑った。
「おい、何笑ってんだ。気持ち悪ィな」
「ロー、見て見て」
「あ?」
「ボニーがお腹空きすぎてメールしてきた」
「……」
「ボニーのメール中途半端…ぷくく…」
トラファルガーにまで見せてやがる。くそ…嫌な顔してこっち見て来やがる。なまえ覚えてろよ。後でめちゃくちゃ文句言ってやろうと決めて前を向くと、後頭部に思いっきり何かが飛んできて当たり、思わず振り返った。
「ってーな!」
「ボニーちゃん何か落ちてるよ」
「ん?」
サンジに言われてそのまま下を向くと、そこには袋に入ったペロペロキャンディー。黄色だ(レモンかな)。拾い上げて、投げた張本人であろうなまえを見ると、あげるーと口パクしながらキャンディーを舐めていた。
「もらった」
「嬉しそうだねボニーちゃん」
「へへ、なまえはいつも最後にはウチのこと助けてくれるんだ」
「…それはよかった(餌付けでもされてるのか?)」
「うま!」
なまえがくれたキャンディーの袋を剥ぎ取って口へ入れると、予想通りのレモン味。ウチの機嫌はあっという間に良くなって、いた、のに。
「ジュエリー・ボニー」
「んあ?」
「…」
「むぐ!」
目の前のこの教師はウチのキャンディーの棒を掴んで没収しようと引っ張ってきた。負けるものかと慌ててバリバリ噛み砕き、棒だけが口から引き抜かれた。
「チッ…」
「残念でしたーもう食っちまった」
じゃりじゃりと音を立てながらキャンディーを砕き、お前といいルフィといいなまえといい授業中にバリバリと忌々しい、と吐き捨てて黒板へ向かうスモーカーの背を見送る。…せっかくのキャンディー、もうちょい味わって舐めたかったのに。
「やっぱりこの席が悪いんだろうなァ」
「…ボニーちゃんはどこで食べててもルフィ並に目立つぜ」
「マジ?」
「ああ(量的に)」
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