とある島で、海賊たちがキャンプファイヤーをしながら騒いでいた――と言っても、それは少人数な海賊団で、その中には仲間ではない2人の男女も混ざっていた。男は背中に、女は腕に入れ墨をしている。それは、あの“白ひげ海賊団”の団員であることを表していた。2人を匿っていた男は、突然割り箸を差し出しながら言う。

「お前らもやってみろ! 楽しいから!」
「……あのな、ルフィ」

 オレンジ色の帽子を被った男が、割り箸を無視して苦笑いをする。隣に座っていた小柄な彼女は、笑顔を浮かべながら受け取った箸を割り、料理を食べ始めた。

「おい、なまえ! それ割っちゃダメだ! 鼻に入れて、こうして…こうやるんだ!」
「私女よ。出来ないわ、そんなこと」
「おいルフィ、なまえに変なことを勧めんな」
「エース。それ私のお酒」
「ああ、悪い……ま、いいだろ?」
「もう」

 そう言ってなまえはエースに寄り添い、彼のがっしりとした肩に頭を乗せる。エースもまた穏やかな笑みを浮かべて、酒を口に含みながらなまえの髪を撫でる。
 そんな雰囲気を読むこともないルフィは割り箸芸を勧め、エースたちの料理を盗み食いする。ついにナミの命令でやってきたサンジに、ずるずると引きずられていった。

「いい加減空気くらい読めるようになれ! 船長だろお前」
「なんだよサンジ、はなせよ!」
「恋人同士2人っきりにしてやれって言ってんだよ!」
「ルフィ。お兄さんとまた会えて嬉しいのは分かるけど、恋人が一緒なら話は別よ。少しくらい雰囲気は作ってあげなきゃ」
「……すぴばせんでひた、」

 なかなか大人しくしないルフィをナミが制し、その鉄拳を喰らったルフィは素直に謝った。まったく…と額を押さえながらナミがエースたちの方を窺うと、雰囲気はすでにできあがっていて、安心して頬を緩めた。

「なまえ……悪いな、出来の悪ィ弟で」
「いいじゃない、賑やかで。私は好きよ?」
「……俺より、か?」
「だったらどうするの?」
「そりゃあお前……妬くよ、とりあえず」
「そう」
「笑うな馬鹿」

 なまえの肩を抱いて意地悪くこめかみにキスをすると、彼女はくすぐったそうに笑ってエースにもたれかかる。酔いが回ったのか、その直後に規則正しい寝息を立て始めた。

「……おーい」
「あら? なまえったら寝ちゃったの?」
「悪ィな、毛布とか借りられるか?」
「ええ。ちょっと待ってて」

 エースの呼びかけに応じたナミが、船室から持ってきた毛布をなまえの肩にそっと掛けた。その毛布の上から、エースがしっかりと腕を回して抱きしめる。

「料理から布団から、色々世話になっちまって悪ィな」
「いや、楽しいからいいよ! 気にすんな! しっしっしっ!」
「おう」

 ルフィにもう一度礼を言うと、エースはなまえを抱きしめたまま眠った。



「あいつら本当に仲良しだなー!」
「馬鹿ねルフィ。仲良しとかの域じゃないわよ」
「……何が違うんだ?」
「ま、あんたには分かんないでしょうね」
「?」


[ back ]