夕暮れ。家が隣で恋人同士でもある俺たちは、いつも途中の道で皆と別れて2人きりで帰る。手を繋いで、他愛ない話をして。けれど、今日は違う。

「ねぇ、ナルト?」
「……ん?」
「な、なんでも……ない…」

 手を繋いではいるものの、俺は2人きりになってから全く話さない。なまえはそんな俺の様子をおかしく思ったのか話しかけてきたけれど、それに答える気にはなれず愛想のない返事をした。

「ナルト、なんで何も話さないの?」
「なんで…? なまえこそ、さっきのは何だってばよ」

 ――サスケと、抱き合ってただろ。

 立ち止まって俯いたまま低い声で言ってやるが、なまえはあまり動揺していなくて。その態度に苛立って睨み付けると、なまえは笑いながら話した。

「な、何がおかしいんだってばよ!」
「サスケは、私が階段で転んだときに階段の下にいただけよ」
「……へ?」
「転んで階段から落ちた私を、抱き留めてくれただけ」

 じゃあ、全部……。

「俺の、勘違い?」
「うん」
「…………」
「……」
「よかったってばよ!」
「きゃっ!」

 満面の笑みでなまえに抱きつけば、よろけて2人して道の脇の草原へごろごろと転ぶ。頬や服が草だらけになりながら、なまえを思い切り抱きしめた。

「よかった、よかったってばよ!」
「待ってよナルト! ん、くすぐったいってば」


 なーんだ、勘違いか!


「サスケ、なまえを助けてくれたんだってな!」
「おい、ナルト」
「ん?」
「なまえにもっと注意力をつけさせろ、ウスラトンカチ」
「なっ」
「階段で毎回転ばれちゃ迷惑だ」
「……なまえ…」


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