「あっれー? シズちゃん」
「何で居やがる」
「やだなぁ、偶然だよ偶然」
せっかく久々に彼女のなまえと2人で気分良く歩いてるってのに、なんでこんなときに限ってコイツが出て来やがる。……こんなときだからか。くそ、ノミ蟲が。
「あー! 臨也だ!」
「なまえ、デートかな? いいねぇ」
「てめぇ、なまえと話すな」
なまえの前に出て、馴れ馴れしくも話しかけてくるノミ蟲との間に壁を作る。絶対にコイツには近付かせねえ。なまえまで毒されちまったらどうしたらいいんだ。
「臨也、今日も黒いコート」
「だって寒いじゃん」
「そのコートしかないの?」
「……ないんじゃない、お気に入りなだけだよ」
もしかして今見栄張ったのか、このノミ蟲。……じゃなくて、今はそれより――。
「なまえ! こんな蟲ケラと話すな!」
「大丈夫。直接臨也に触らなければ、何も伝染らないよ」
「触らなくても耳から伝染る」
「酷い会話だなぁ」
俺病気も何も持ってないのに、と臨也の奴が手とコートを広げて見せるが、そういう問題じゃねえ。その性格が問題なんだ。
「まぁいいや。じゃ、デート……せいぜい楽しんでよ」
「チッ」
「舌打ちしないでよシズちゃん」
いつもいつも出てきやがって!
デートの約束をどこで知りやがるんだ?
「…………今日は悪かった」
「要所要所でしっかり邪魔してきたね」
「ノミ蟲め…」
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