「おいなまえ、起きろって」
「んー……あと1時間…」
「は? 馬鹿起きろ! 俺は先に行くぞ。まだまだ仕事が溜まってんだよ」

 自らの一言でその膨大な仕事量を思い出したのか、深い息を吐いて部屋を出る準備をする彼。私はまだ起き上がる気にはなれず、まだ一角の傍にいたくて、駄々をこねる子どものように毛布をぎゅっと握っている。

「んだよ、本当に起きねェつもりか? なまえ」
「……だって」
「とりあえず俺は隊長からも呼ばれてるしよ、戻らねェと」
「一角」
「あ?」

 行かないでと言わんばかりに、強く一角の死覇装の裾を掴む。そして私は、少し潤んだ瞳で彼を見つめれば、願いを聞いてくれることを知っていた。
 現に一角は私の目を見て、少し頬を赤らめて停止している。諦めたように溜息をついた彼は畳に座り直すと、「5分経ったら出るからな」とそっぽを向いた。

「一角、抱きしめて」
「甘えてんなよ馬鹿なまえ」
「じゃあ私も一角のこと、やちるちゃんと同じくつるりんって呼ぶから」
「だぁあァッ! うっせーな! 抱きゃぁいーんだろ、抱きゃあ!」

 最終手段のつるりんを使うと、あれだけは止めろと言いながら、乱暴にだけれど抱きしめてくれた。

「一角、ちょっと苦し…い」
「わがまま言うな」

 そう言いつつも腕を少し緩めてくれるので、にやけてしまう。でも、5分なんて時間はあっという間で。

「……5分だ」
「うん」
「これ以上は無理だ。隊長に殺される」

 真顔で言うので焦っているのだろう。それでも寂しくて、また裾を引いてしまう。

「……あのなぁ」

 裾を引いたまま黙っていると、顔を上向かされて口付けを受ける。思わず目を見開けば、ニヤリと笑う一角が視界いっぱいに映った。

「ま、なるべく早く戻る」


 最上級に愛してあげる


「お前らどこから見てやがった」
「つるりん、やっるね〜!」
「よっ、つるりん! 色男だね」
「……弓親まで…テメェ覚えてろ」


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