深夜1時。いつもならとっくに寝ている時間なのに、今日はまったく寝付けずに目が冴えてしまっている。その原因となっているのは、紛れもなく彼だ。隣に寝ている……というか、私を抱きしめて寝ているこの彼。

「………ん」
「!」

 彼が隣でもぞもぞと動く度に目が覚める。決して腕枕が寝心地悪いわけでも、気になるわけでもない。ただ、彼とこうして眠る事自体が初めてなわけで。つまり、緊張している。かといって、寝ないと確実に目の下にクマが出来るだろう。彼の前でそんな顔で居るなんて恥ずかしすぎる。

「ど、どうしよ……」

 無意識に呟くと、起こしてしまったのか彼がうっすらと目を開いた。欠伸をして目を擦りながら、携帯の画面で時間を確認している。

「ん……まだ夜中やん」
「ごめん蔵ノ介、起こしちゃった?」
「別にええけど……どないしたん」
「え?」
「寝れへんの?」

 寝起きの少し掠れた声に、眠そうに細められた目、問い掛けながら優しく髪を梳いてくれる指先。なんだか全てが色っぽく感じて、顔が熱くなるのが分かった。夜中でよかった、周りが真っ暗で本当によかった!

「なぁ、なまえ」
「ん?」
「腕枕嫌やった?」
「ううん、違うの。ただ、緊張しちゃって…寝付けなくて」
「……なまえ」

 なんとなく合わせられずに下げていた視線を上げると、急に唇が触れる。驚いて目を丸めると、暗闇の中でくすりと笑う気配がした。

「びっくりして緊張解けたやろ」
「と、とけた、けど」

 びっくりしすぎて、逆に目が覚めちゃったとは言えない。また視線を逸らすと、ふっと笑って抱きしめられた。

「ほな、眠れるまでキスしたろか」


 結構です!


「遠慮せんと、甘えてええんやで」
「心臓止まっちゃうからいい」
「……かわええな、お前」
「蔵ノ介のばか」
「よし、襲ってほしいって意味やな?」


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