今日は、良太郎と私の2人きりでお店番。お客さんも少ないし、ちょっとだけ休憩しよう。一緒にコーヒーを飲みながら、ふと思い出して呟いた。

「良太郎さ」
「え?」
「今日、誕生日だよね」
「あ、うん。知ってたの?」
「もちろん!」

 日にち間違えてなくてよかった…! でも、プレゼントは何も考えていない。もちろんケーキを予約しておいたりも…していない。
 好きな人の誕生日なのに、なんて気の利かない女なの。せめて休憩のときに出せるように、少し奮発したお菓子くらい用意しておけばよかった。

「……良太郎」
「ん?」
「ほら、その…欲しいもの、とかさ」
「?」
「あるかな?」

 首を傾げる良太郎に、欲しいものないの? ともう一度聞いてみる。彼は少し驚いた顔をして、緊張した顔で口を開いた。

「じゃ…じゃあ、さ」
「うん?」

 良太郎が自分の欲しいものを教えてくれるなんて、初めてじゃない? なんだか嬉しいな。にやけそうな頬を抑えて待っていたら、顔を赤くした彼が、私の目を真っ直ぐに見て小声で言った。

「あ、あの……なまえちゃん…って、だめかな?」
「え?」
「僕の誕生日プレゼント……なまえちゃん、って」

 ごめん忘れて!――さっきよりも真っ赤になって顔を背ける良太郎。……ウラタロスとか入ってない、よね。まずウラタロスなら、こんなふうに照れたりなんてしないよね。……じゃあ、今のは本当に…。

「良太郎」
「あっ、え…はい!」
「……いいよって言ったら?」
「え?」
「もらってくれる?」


 プレゼントは、(君がいいな、なんて)


「ゆ、夢じゃないよね?」
「なまえちゃん、それは僕が聞きたいくらいなんだけど…」
「ウラタロスじゃ…ないよね?」
「大丈夫、僕だよ」
「……良太郎、大好き!」
「わっ! くすぐったいよなまえちゃん!」



tkrさん誕に/3.21

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