あ、あの少し丸まった背中は!

「つーばーきーく…」
「うわぁああぁ!」
「……そんなに驚かないでよ」

 1人で廊下をうろうろしていた椿くんを見つけて、声をかける。すると彼は、大声を上げて飛び退いた。何よ、そんなに驚かすようなことをしたかしら?

「は……あ、なまえさん」
「おはよう椿くん、朝練?」
「…うす」
「そっか。まだ皆起きていないくらいの時間なのに。頑張るねぇ」

 椿くんの背中をぱしぱし叩きながら言うと、わたわたと慌てた顔で変な反応をする。いつ見ても面白い子だ。

「あの、なまえさんは何でこんな早く?」
「ああ…私は色々作業があって。有里たちもそろそろ起きると思う」
「そ、そっすか」

 ちょっとだけ頬を赤くして目を逸らす彼。顔を覗き込むと、ビクッと肩を震わせて驚いた。……なんだか、その辺の女の子よりもよっぽど小動物みたいな仕草。

「……椿くん!」
「は、はい!」
「ちょっと早いけど朝ご飯行かない?」
「へ?」
「一緒に」

 にこりと笑って誘えば、さっきよりも顔を赤くして、首を物凄い速さで縦に振った。本当、面白いなあ椿くん。



「テメェ椿! なまえさんと朝飯行ったろ!」
「ひっ…クロさん」
「行ったよな! あ?」
「すすすすすみませっ…」


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