好きな人が、私には全く見向きもしてくれない。彼がいると知って、この蜂城学院の九華科に入りたいと親に無理を言って入ったのに、これでは意味がないではないか。

「あ、千駿くん」
「? ああ……確かなまえチャン…だっけ」
「うん。あの」
「ごめん、ちょっと可威と柚留チャンの所に行きたいんだよね。通してくれる?」

 困ったように笑われたら、退かないわけにもいかず。ごめん、と慌てて道を空ける。今日も全然だめだった。肩を落として、HONEYに慰められながら食事へ向かう。途中、那由太が一緒にどうかと誘ってくれたけれど、それも断った。
 すると、可威たちと無理矢理一緒に座っていた千駿くんが、こちらに気付いて手を振った。

「……え」
「なまえチャンも一緒に食べない?」
「なまえちゃん、一緒に食べよ! いいよね、可威!」
「ああ」

 ほんの気まぐれで笑顔で手を振るあなたに、やっぱり私は惹かれてしまう。あなたの目には私なんて、ちっとも映ってはいないのに。


 手の届かないあなた

 こんなに近くで笑っているのに、どうしてこんなにも遠いのかな。


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