俺は甘いモンが嫌いだ。吐くほど。

「ハル。生チョコ作ってみた」
「甘いモンは要らねえ」

 煙草の煙を吐きながら、きっぱりと言う。他のやつらにも差し入れとして渡していたからまさかとは思ったが……やっぱり俺の分も用意していたか。

「……どうしても?」
「ああ。嫌いだ」
「……」

 しゅんとなまえが小さくなったが、いつものことだから特に気にしない。「酷い! 鬼! 悪魔!」と周りが煩いが、それも気にしない。

「じゃあ…いいもん」

 今日は諦めが早いな。

「カイ君にあげる」

 ………そういうことか。

「はい、カイ君」
「え? さっきもらったのに!」
「ハルは要らないって」

 アイツ……なまえが作るチョコだのクッキーだのが好きだからな。じゃあ遠慮なく、とか言って手に取ってやがる。……こういうとき、男は単純なもんで。甘いモンは嫌いでも、自分の彼女が作ったモンが他の野郎に渡ると思うと、多少苛立つ。

「あれ、ハル? ちょ、待っ…それ今もらったのに!」
「元は俺のだろ」

 開かれかけていた小さな菓子箱を奪い取ると、新しい煙草に火をつけて外へ出た。



「ハル、甘いの嫌いなくせに」
「あれはヤキモチだよ。なまえちゃん」


[ back ]