「今日はよく晴れましたね。なまえ様」
「ええ、シエルは?」
「もうお目覚めですよ」

 にこりと笑って紅茶を差し出してくれるセバスチャンからカップを受け取り、一口含む。今日も美味しい。自分の屋敷とはまた違う客室での、優雅な朝。昨日から私は、ファントムハイヴの屋敷へ遊びに来ている。友達のシエルはもちろんだけれど……そう、セバスチャンに会いに。

「おはよう、シエル」
「なまえ。おはよう…よく眠れたか?」
「ええ、もちろん。素敵なベッドね」
「それはよかった」

 シエルが待つ部屋へと向かい、一緒に朝食をとる。私の隣ではセバスチャンが、グラスに甘いオレンジジュースを注いでくれている。……私の好きなメーカーのボトル。覚えていてくれたのね。

「そういえばなまえ様、新しくできたカフェをご存知ですか? この屋敷からそう遠くないのですが…」
「いいえ、知らないわ」
「すっかり坊ちゃんのお気に入りのカフェなんです。機会がありましたら是非」
「行ってきたらどうだ、お前たち」
「え?」
「僕は昨日の誰かさんとのチェスで疲れているからな。もう一眠りする」
「……ごめん、そんなに疲れた?」

 申し訳なくシエルを見つめると、彼は私に向けてニヤリと笑う。もしかして、デートのチャンスを作ってくれたってこと…? そっとセバスチャンを見上げると、顎に手を添えて少し考えた後、ふわりと微笑んで口を開いた。

「……行ってみましょうか、なまえ様」
「え」
「私で宜しければ、ご一緒に」


 さあ、出かけましょう


「ありがとう、シエル!」
「何のことだ? 僕は外出を勧めただけだ」
「照れなくていいのに!」


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