「洋平」

 後ろから僕を呼んだのは、彼女のなまえ。今日は浩平は友達と遊びに行っているし、親も買い物で出かけている。今この家の中には、僕となまえの2人だけ。僕の部屋で雑誌を読んだり、学校での話をしたりして過ごしていた。

「ねぇ、洋平」
「ん?」
「抱きついていい?」

 答える前になまえは僕に抱きついた。勢いで後ろに倒れそうになるのを堪えながら、なまえの背中に手を回す。僕よりも小さな背中を軽くポンポンと叩き、髪を撫でた。

「何? いきなり」
「洋平、あったかい」
「……なまえ」

 抱きつく腕の力が少し強くなり、ぎゅっと服の裾を掴むのが分かった。そして不意になまえの体が離れて何やらごそごそと漁っていたかと思うと、手元にふわりと微かな感触。

「……ん?」

 手元を見ると、そこにはなまえがくれたバレンタインのチョコの袋を結んであったリボン……によって結ばれた、僕の両手が。

「なまえ?」
「洋平、つかまえた」
「………」
「ホワイトデー、これがいいな」


 リボン結びの手錠


「……つかまっちゃった」
「ふふっ」
「でも、コレほどいてよ」
「どうして?」
「このままじゃなまえを抱きしめられない」


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