「貞治」
「……ん?」

 私が名前を呼んだら、ノートに何かを書き込みながら返事をする彼。つまらない……せっかく一緒にいるのに、何か書いたりいじったりしながら静かに過ごしているなんて。

「ひま…」

 ぼそりと呟けば、貞治が振り向く。今度こそ構ってくれるのかと淡い期待を抱いて彼を見ると、その眼鏡が怪しく光った。

「なまえ」
「はい?」
「喉は渇いていないか」
「あ……そういえば」

 渇いてる。と答えると、彼は手元のカップをずいっとこちらへ差し出した。……まさか、これは――。

「新作の乾汁だ。たった今調合し終わったところだ」

 ニヤリと笑って「さあ、グイッと」と勧めてくるが、飲んだら私の命が危険に晒されるだろう。そう悟った私は、力の限り秀一郎の元へと走った。


 喉の渇き


「なんだ、どうしたんだ? なまえ」
「助けて秀一郎! わっ、貞治!」
「何故逃げるんだ、なまえ。さあ、グイッと」
「いいい、いらないっ!」
「……なまえは毎回新作が出る度に災難だな…」


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