「カチロー!」
「はい、なまえ先輩! なんですか?」

 笑顔で駆け寄ってくる、可愛い後輩の勝郎くん。マネージャーの仕事をよく手伝ってくれる、優しい子だ。

「ちょっとボール運び手伝って?」
「はい!」

 にこにこしながら後をついてくるカチローは、まるで弟のようで。大量のボールが入った大きなケースを、カチローにひとつ持たせ、私もひとつ運ぶ。

「ごめんね? 手伝わせちゃって……」
「いえ、なまえ先輩にはいつも練習のサポートとかしてもらってますし! こんな事しか返せないですから」
「カチロー…」

 ボールの入ったケースを一度コート脇に置き、カチローの頭を撫でてやる。

「なまえ先輩!? あの」
「ふふ…ありがとね、カチロー。手伝ってくれて」

 そして彼の手の平に、お礼に…とひとつ握らせた。


 風船ガムを


「お前、なまえ先輩に何もらったんだよ!」
「あ、堀尾くん。ガムだよ」
「なんでいつもカチローばっかり!」
「だってカチローくんはいつもなまえ先輩の手伝いをしてるじゃない、堀尾くん」
「……くそーっ!」


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