「健二郎」
「ん?」

 振り向いた健二郎は、びっしょり汗をかいていた。今日は決して暑くはない日なのに、あれほど汗をかくなんて。普段試合に出ているレギュラーの皆はもちろんだけれど、いつも陰から支えている部長補佐の彼だって、こんなに頑張っているのだ。

「なんや? なまえ」
「はい。タオル」
「ああ、おおきに」
「いいえ」

 にっこり笑ってタオルを渡すと、健二郎がこちらをじっと見た。

「……どうかした?」
「なまえは暑ないんか?」
「んー、私はちょうどいいかな。皆みたいに動いているわけじゃないしね」
「そうか。まあ、あと1時間で今日の部活も終わりやし……なまえも疲れとるやろけど、付き合うてな」
「うん」

 ぱさりとベンチにタオルを放って、彼はまた練習へと戻っていく。その後ろ姿を見送っていると、背後で謙也が騒ぎ始めた。さて、私もお仕事もうひと頑張りしよう!


 なんでやねん!


「なんでなまえは副部長には優しいんや」
「ええやん別に」
「俺には冷たいんやで!? クラスも一緒やのにあんな対応された記憶も、優しくタオル渡された記憶もないで!?」
「はいはい。その台詞今週3回目や」
「日頃の行いちゃう?」
「謙也練習に集中しなよ」
「ほら! 冷た……」


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