「なあなあ! さっきめっちゃ可愛い子が職員室入ってくの見たぜ!」
「けど、ここらでは見たことない制服やったで。転校生ちゃう?」

 1年生部員たちの素振りを見てやりながら、向日と忍足の会話を聞いて口角が上がる。……やっと来たか、あいつ。転入手続きに少しばかり手間取ったようだが、無事に日本へ着いてんならそれでいい。

「向日、それはどんな女だった?」
「可愛くて目がキリッとしてて、頭が良さそうで、あと……っあ! あの子!」

 振り向いてみれば、そこには俺様が長いこと待っていた顔があった。向こうも、俺を見るなり嬉しそうに駆け寄ってくる。……可愛いじゃねぇの。背後で向日と忍足(気付いたらジローも増えていた)が、知り合いなのかとしつこく騒いでいるが、余裕の笑みを浮かべてやった。

「よう、なまえ」
「景吾! 元気そうだね」
「お前こそ……アメリカ行ってる間に少し太ったんじゃねぇか?」
「しっ…失礼ね!」

 必死に否定するなまえ。昔から本当にからかい甲斐があるやつだと満足した。

 俺様のジャージの裾を握りしめて、紹介されるのを今か今かと待っている忍足たちに気付き、手を振り払う。「けち!」と小さくブーイングをし始める忍足には睨みを送った。……仕方ねぇな、名前くらいは教えておいてやってもいいか。後々説明するのも面倒だからな。

「おい、全員聞け! ここにいるこの女は跡部なまえ、俺様の双子の妹だ。手出したらブッ飛ばすぜ、アーン?」

 そう言い放つと、部員全員の表情が固まった。確かに双子ってのは珍しいのかもしれねぇが、そんなに驚くことか…?

「忍足、何固まってやがる」
「……双子やて?」
「ああ? この気品ある容姿から立ち振る舞いまで、全てが俺様そっくりだろうが」
「………」

 なまえを引き寄せて当然のように言うと、忍足は「嘘や、これは何かの間違いや」とふらつきながら部室へ戻っていった。……どこまで失礼なやつなんだ、ったく。

「でも、言われてみりゃ似てるよな。目元とか」
「そうですね。俺も目が似てるなって思いましたよ」
「目はね、よく言われるの。小さい頃は景吾と見分けがつかなかったらしいし」

 気付いたらなまえは、俺の腕をすり抜けて宍戸たちと話していた。やつらなら問題ないだろうと思ったが、ジローが混ざろうとしていたので引き戻す。

「あー! なまえちゃーん! ……ちょっと話すだけだC、跡部ー!」
「駄目だ」
「景吾、私皆と話したい」
「……駄目だ」
「……」

 なまえから少し睨まれるが、部員から遠ざけるために何とかガードする。……にも係わらず、数日後にはなまえとレギュラー部員はすっかり仲良くなっていたのだった。


 “アーン? コイツは俺様の妹だ”


「忘れもしないあの衝撃」
「……しかし、なまえと跡部が本当に双子とはなー」
「スラ●ダンクで言う赤木兄妹やな」
「……何か言ったか、忍足」
「いや何も」


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