今日は毎日頑張っている皆のために、女子マネらしく私も頑張ってみた。なんと、差し入れにカップケーキを作ってきたのだ。普段家でも1人で留守番しているときくらいしか料理はしないし、双子である光にも食べさせたことはない。きっと光も皆も、私を調理実習以外で料理したことがない系女子だと思っているだろう。

「でも、今回のは自信作や!」

 不味いなんて言う部員がいたら、思わず手をあげてしまいそうなほどの自信作。だから今日は珍しく差し入れ。何がなんでも美味いと言わせてやる。

「皆、差し入れやで!」
「おお!」

 そろそろ休憩時間かと時計を見ながら声をかけると、ちょうどお腹が空いてくる時間だったため、目を輝かせて駆け寄ってくる部員たち。真っ先に飛んできたのは金ちゃんで、私の隣に来たのは光だ。

「気ぃ利くやん、なまえ」
「マネージャーなんやし、これくらい当然やろ? 手作りやで」
「は?」

 金ちゃんと師範以外の、全員の顔が強張る。というか師範は無表情で合掌しとるけど、どういう意味やねん。

「え……何? 皆…」
「小春、俺まだ死にたないで」
「なまえさん料理できるん?」
「えっ。ユウジ先輩、小春先輩?」
「味見は?」
「しましたよ千歳先輩」
「なんや賞味期限切れた危ないモンとか、入ってないやろな?」
「なまえ、俺ら試合近いねん」
「せやで、なまえ」
「謙也先輩、蔵ノ介先輩、小石川先輩まで……やけに真剣な顔で失礼ですね」
「誰か毒見せぇ」
「何か言うたか光」
「なまえはん、料理の経験は?」
「それなりです、師範」
「なぁなぁ、なまえ。もうコレ食ってええか? あかんのん?」
「食べてええよ、金ちゃん」

 身を乗り出しながら唯一前向きな発言をしてくれた金ちゃんの頭を優しく撫でてあげながら答えると、やったー! と嬉しそうに手を伸ばす。ぴりりと紙製のカップを少し破いてからケーキを取り出し、目をキラキラと輝かせている。

「ほな、なまえ! ワイ、食うで!」
「どうぞ」

 ぱくりと大きな一口。んぐんぐと何回か噛み、ごくんと喉を通った。

「どう?」
「めちゃくちゃ美味いで!」
「やろ? 自信作やねん! 私も食べよ」

 余分に作ってきた分を自分でも食べていると、金ちゃんが「ワイもう1個欲しい!」と言い出したので、余りの分からひとつあげた。

「おかわりて……金ちゃん、ほんまに美味いんか? それ」
「美味いでぇ、めちゃくちゃ!」

 その言葉に安心したのか、他の部員たちもそろそろとカップケーキへ手を伸ばす。再び金ちゃんの頭を撫でると、「おおきに、美味かったで!」と輝く笑顔で言ってくれた。

「……美味い」
「せやろ、白石!」
「……ほんまや、美味いわ」
「嘘みたいや」
「ほんま失礼っすわ、先輩たち」
「なまえ」
「あ、光」
「……」
「ねぇ、何?」

 一口食べたカップケーキを手にしたまま、光が固まっている。痺れを切らして先を促すと、小さく口を開いた。

「……なまえにしては、美味いんちゃう?」
「へ?」
「……バカとハサミは使いようってのは、ほんまやったんや」
「しばくで光」


 意外に料理上手


「なまえ、うちに嫁に来る気ある?」
「遠慮します蔵ノ介先輩」
「こんなにも棒読みでフラれたのは初めてや」
「お前でも料理できるんやな」
「ほんましばくで光」


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