「ははっ、なまえって結構面白いヤツなのなー!」
「本当だよね。あの雲雀さんの彼女だっていうから、もっと怖い子だと思ってたよ…」
「あはは。恭弥は皆と遊ぶの苦手だからね」

 最近できた、私の友達。ツナたちや京子に花、他校のハルちゃん。皆が仲良くしてくれたおかげで、恭弥を怖がっている人たちも話しかけてくれるようになった。恭弥は他の人と一緒にいるのが嫌いみたいだけれど、私は皆といるのが楽しい。

「おい、なまえ! まだ授業2時間あるぜ? もう帰るのか?」
「恭弥に呼ばれてるの」
「あ、そっか! 行ってらっしゃい」

 ツナたちに見送られて、手を振りながら教室を出る。恭弥に呼ばれたのは、ついさっき。私、何か怒られるようなことをしたかしら。考えても身に覚えがない。
 応接室に到着して中へ入ると、こちらに背を向けて立つ恭弥がいた。

「恭弥? どうしたの?」
「……なまえ……君、何考えてるの」
「え?」

 振り向いた恭弥の目は少し冷たく、怒気を含んでいて、どこか哀しい色をしていた。一歩一歩近づいてくる恭弥に、思わず後退る。しかし私の後ろは壁で、すぐに追い詰められてしまった。

「君は誰の彼女だい?」

 何故そんなことを問うのかも分からず、恭弥だと答える。
 返ってきたのは、

「……僕は、他の男と話すことなんて許可した覚えはないんだけど」

 という答え。
 なんだか拍子抜けしてしまい、きょとんと恭弥を見つめた。

「なまえ、少しは自覚しなよ。君の周りにあんなに草食動物が群れているんだから」
「恭弥まさか……嫉妬、してくれてる…の?」
「……君に群れている草食動物が、目障りなだけだよ」

 目を逸らす恭弥の顔は、赤面とまではいかずとも、少し照れたような表情をしていた。いつも無敵でほとんど動じない恭弥がこんな風に心配してくれるなら、たまにはヤキモチも悪くないかも……なんて、考えてしまう昼下がり。



「別に、心配したわけじゃないから」
「嘘ばっかり」
「……」


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