今日から1週間、黒曜中はテスト期間に入る。今年最後のテストだけに、成績を少しでも良くしようと皆頑張っている。前回の成績があまり良くなかった私も、もちろんその1人だ。自習時間である今も、参考書や教科書を机いっぱいに開いているのだけれど……涼しい顔で頬杖をつく男が、隣に1人。

「……骸さーん」
「何です? なまえ」
「骸は勉強しないの?」

 彼は教科書すら出さず、頬杖をついてこちらを見ていた。じっと見られていると正直、勉強がしづらい。

「こんな暗記科目に、勉強も何もないでしょう」
「暗記だからこそ、教科書とか読むんじゃないの…?」
「おや。まだ覚えていない所でもあるんですか? 範囲はたったの30ページですよ」
「………」

 骸って、そんなに暗記科目が得意だったんだろうか。でも、確かに彼はどのテストでも涼しい顔をしているし……どの科目も得意なのかな?

「あ、あのさ」
「はい?」
「……理科、教えてくれない?」
「理科、ですか?」

 少し驚いたように聞き返す骸に、控えめに頷く。今日のテストの3つ目は理科。それまでにどうしても解けるようにしたい応用問題があるのだ。

「クフフ…構いませんよ」
「ほ、本当に?」
「はい。今から教えましょうか?」
「……お願いします」

 軽く頭を下げて机をくっつけると、骸は優しく微笑んだ。

「さあ、始めましょうか」
「………………」
「何です?」
「あ、い……いえ、お願いいたします」
「では、この公式から」

 すっと眼鏡をかけて勉強モードに入る骸に、少しだけドキドキしたのは内緒だ。



「なまえ、この法則は出ますよ」
「じゃあ、こっちは?」
「……それは範囲外ですよ」
「え? だって58〜75ページって」
「それは英語のテスト範囲ですよ」
「………」
「……気を確かに…」


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