真選組の屯所を出て、ふらふらと散歩……もといパトロールへ向かう。またあの土手に行って昼寝でもしてやろうか。どうせ怒られるのは上司である土方……ん? その上の近藤さんか? ……まぁいいや。だらだら考えていると、後ろから隊服の襟を引っ張られる。多少の怒気も感じられる。誰なのかはもう分かっている。

「……何でィ、なまえ」
「何でィじゃないわよ。馬鹿」
「この俺に馬鹿とはね……なまえこそ何でこんな所に居るんでさァ。今日はお前非番だろィ?」
「私が居ないとこうやってさぼるでしょう、あなたは。もう土方さんと一緒に始末書を書くのは嫌なの」

 どうやらなまえにはお見通しだったらしい。逆に言えば信用がないって事なんだろうが。何にせよ、さぼれなくなっちまった。今日の昼寝は諦めるしかなさそうだ。軽く舌打ちをして歩き出すと、なまえももちろんついてくる。

「……あ。なまえ」
「何? 総悟」
「甘味処でも寄るかィ?」
「何言ってんの、勤務中よ」

 冷たくピシャリと言い切る彼女に、分かってねェなと溜息を吐く。何よ、と顔を顰める彼女の手を引き、半ば無理矢理近くにあった甘味処へ入った。

「ねぇ、何?」
「今日は夫婦の日だろィ?」
「え?」
「知らねェのか…呆れるねェ」

 店員が持ってきた水を飲み干し、適当に餡蜜とパフェを頼んで、呆れ顔で彼女を見遣る。本当に知らなかったらしい。未だにポカンと口を開けている彼女の前に、注文したパフェが出された。

「食わねェなら俺が食いまさァ。どうせ俺の金だからな」
「た、食べ、食べるから!」
「ガチガチに噛んでらァ」
「う…うるさい!」

 顔を赤くしてパフェを食べている彼女を見て、素直に喜びゃいいのにと思いつつ頬が緩んじまうのは、惚れた弱みってヤツか。

「……総悟」
「何でィ」
「……ありがとう」
「あァ」

 ……結構素直じゃねェか。んな顔されちゃ、また頬が緩んじまうだろィ。



「てめ、総悟! まーたさぼりやがって!」
「今日はなまえとの愛を確かめ合ってやした」
「はァア!? 何言ってんだテメェは!」
「そのまんまでさァ」
「すみません土方さん。甘味処に行っていたんです」
「ほーらな。なまえみてェに素直に謝りゃァいいんだよ」
「……なまえは素直すぎまさァ」



 毎月22日は夫婦の日、
 11月22日はいい夫婦の日。


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