「ちょっと、またスクアーロあんなに殴り飛ばして。本当にかっ消しちゃったらどうするのよ、ボス」
「その時はその時だ、あんなカス鮫」
「またそんなこと言う……」

 先程スクアーロを派手に殴り飛ばしたボスに、抗議をする。しかし、対応はいつもと全く変わらないものだった。自分の誕生日くらい、もっと穏やかにしていられないのだろうか。彼は念入りに手入れされた銃を携え、早々と部屋を出る準備を始めた。
 こんな日にまで、あなたは人を殺めに行くのね。

「……もう行くの? XANXUS」
「ああ」

 周りに人の気配がなくなったのを確認してから、ボスに静かに声をかける。名前で呼ぶのを許されたのは、いつ頃だったか。そう、確か恋人同士になったばかりの頃。XANXUSと呼んでもいいかと尋ねたら、ああ、と頷いてくれたのだ。

「今日ぐらい、休んだら?」
「駄目だ」
「どうして」
「カス鮫にあれだけ怒鳴りつけておいて、この俺が休めるか。馬鹿なまえ」

 納得できずに抱きつくと、頭上から軽い溜息が漏れ、背中に腕が回された。

「行っちゃうの? これでも?」
「当たり前だ。次期ボンゴレボスとして仕事を怠るわけにはいかねぇ」
「まだ完全に10代目になったわけじゃないわ」
「……直にそうなる。同じことだ」

 私の意見なんか聞いてくれない、分かってる。仕事へも笑顔で見送りましょう。10代目になることだって……もちろん分かってる。他の誰よりも、私が彼の強さを知っている。彼が負けることなんて有り得ないもの、きっと。

 だけど、これだけは約束して。

「……帰ってきてよ、ここへ」
「ああ」
「誕生日のうちに帰ってよね。ルッスーリアとケーキ作って、皆と待ってるから」
「なまえ」
「絶対、だからね。ボス」
「……分かってる」

 私の髪をするりと一撫でして触れるだけのキスをすると、彼は部屋を出ていった。


 Happy birthday, XANXUS !


「ししっ、なまえ! ボスは?」
「出かけたわ。お仕事とやらに…」
「ふーん。今夜楽しみだね」
「何考えてるわけ? マーモン」
「別に」
「……マーモン、怖っ」
「さあ! ルッスーリア、ケーキ作ろ!」
「んまぁ、なまえ! 手伝ってくれるの?」
「もちろん」


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