――ゴロゴロゴロ……ピシャッ!
「ひゃっ!」
「……」
さっきから隣で雷に震えているのは、なまえ。まぁ、ウチの彼女……みたいなもの。モスカをいじっていて機械音やら何やらで聞こえないウチは何ともないが、彼女には雷の音が丸聞こえのようだ。
何がそんなに怖いのかよく分からないんだが、涙が出るほどらしい。そんななまえを横目に、ウチは作業を続ける。
「スパナ」
「ん?」
「隣で可愛い彼女が震えているのに、それでも彼女よりモスカなの?」
「……(自分で可愛いって言った)」
「スパナ?」
「可愛いなまえさん、あと3時間くらい待って」
「………3時間」
適当に言った3時間で、そこまで落胆するとは。予想外の落ち込みに驚いて、作業を中断してなまえに目を向ける。
「スパナのばか」
「……ごめん。雷怖かったんでしょ?」
「……ん」
小さく頷くなまえを抱き寄せると、未だに震えている肩は自分のものと比べるとずっと細く、思わずぎゅっと抱きしめた。
「……あれ?」
「何?」
「スパナ、今日は飴舐めてない」
「だって」
「だって何――」
ちゅっと音を立てて唇を離した後、なまえは予想通り真っ赤になっていた。
「こうするのに邪魔だったから」
「スパ、ナ」
「落ち着いたでしょ?」
「あ…うん」
なまえの震えはようやく止まり、気付けば雨も雷も止んでいる。
「はい。あーん」
「へ?」
かぽっと口に突っ込んでやったのは、苺の飴。
「泣いてお腹空いたでしょ。あげる」
「…ありがと」
本当は、苺の飴はこれで最後だったからウチが舐めたかったんだけど。なまえも笑ったし、メロン味で我慢するか。
雷嫌いな彼女(そんなところも好き)
「ね、スパナ」
「何?」
「苺味、もう1個」
「もうない。あってももうあげない」
「………」
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