世間的には休日らしい、日曜日。今日はよく晴れているらしいが、天気や曜日なんてウチには関係ない。ずっと室内でモスカをいじっているんだから。機械音の合間にたまに耳に届く小鳥の囀りや物音で、辛うじて昼か夜かに気付く程度だ。
 口の中に僅かに残っていた飴を奥歯で噛み砕き、新しい飴の袋を開ける。すると、背後から人が近付く気配がした。

「誰?」
「……彼女の気配も分からない?」
「ああ…なまえか。ごめん」

 視線を落として謝ると、くすくす笑って許してくれる。体の小さななまえは、モスカの巨体の隙間や配線の間にするすると潜って遊んでいた。

「転ぶぞ、そんなことしてると」
「大丈夫よ。スパナと違って身軽だから」
「………」

 そのまましばらく見ていると、なまえは見事にコードに引っ掛かり、びたん!と音を立てて転んだ。仕方なく歩み寄って立たせてやると、むすっとした顔がこちらを向く。

「スパナのばか!」
「……は?」
「気付いてよ」
「気付けって、何に」
「……部屋に一人でいるの、結構つまらないんだからね」

 確かに最近は、ここでモスカに専念していたからなまえに構わなかったけれど……なんだ、要するに「寂しい」って言いたいのか。

「……寂しいって言えばいいのに」
「寂しくないもん」
「なら、ウチはモスカの整備の続きを」
「いや!」
「寂しいからだろ」
「…………」

 嵌められたと言いたげな視線に苦笑し、くわえていた飴を噛み砕く。まだ頬を膨らませたままのなまえを上向かせて口付け、薄く開いた唇に飴の欠片をいくつか送り込んだ。

「っう、甘…」
「10分で終わらせる」
「え?」
「ここに座って待ってろ」

 なまえをひょいと持ち上げて手近な椅子に座らせ、急いで残りのモスカの整備を済ませた。


 寂しくなんかない!


「嘘だ。なまえは絶対寂しがり屋だ」
「そ…それはスパナが、あまりにも私をほっとくから」
「とりあえず、予定通り10分で終わったから……続きしよう」
「変態」
「………」


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