深夜。ようやく自室へ戻ると、中にはすやすや眠るなまえの姿があった。普段着のまま横になっているので、ごろごろしていたら眠ってしまったのだろう。

「おやおや、困りましたね。ここは僕のベッドだというのに」

 口ではそう言いながらなまえの髪を梳くこの右手に、苦笑を浮かべる。いつからだろう。彼女をこんなにも愛しく思い、寝顔ひとつ見るだけで幸せを感じるようになってしまったのは。

「……あなたには勝てませんね」

 隣へ入ろうと薄い毛布を捲ると、ぱっちりと開いたなまえの目と目が合った。

「おや。起こしてしまいましたか」
「……むく……ろ」
「気持ち良さそうに寝ていたので静かに入ろうとしましたが……目が覚めてしまいましたか?」
「……んん…ねむ、い」
「そのようですね」

 薄く笑みを浮かべてベッドへ入り、毛布の中で抱きしめると、なまえからも擦り寄ってくる。まるで猫のような仕種に愛しさを込めた口付けで応えてやれば、彼女はまた穏やかな笑みを浮かべて眠りに就いた。

「……本当に、困った人だ」

 小さな仕種のひとつひとつが、僕をさらに本気にさせていくのだから。
 もう一度優しくなまえの額に口付け、しっかりと抱き直して自分も眠ることにした。


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