今日もゆっくり日が暮れて、皆といつもの帰り道を歩いていく。

「隼人?」
「あ? 何だよ」
「……」
「っ馬鹿なまえ! 抱きつくな!」
「彼女なのに…」
「10代目の前でみっともねぇだろ!」
「獄寺君、気にしないでよ。ここからは俺たちだけで帰るし、たまにはなまえちゃんと2人きりで帰りなよ」
「やったー! 10代目大好きー!」
「わわっ、なまえちゃん!」
「こら! 10代目になんつー無礼を!」

 そう言って隼人が私に(彼なりに)軽い拳骨を食らわせる。武たちは周りで微笑ましそうに、にこにこ笑う。助けてはくれない。これが私の日常。
 隼人は10代目、10代目って……ツナくんと仲が良いからなぁ。思わずツナくんに嫉妬することさえあるのに、隼人は全く気付かない。

「隼人」
「今度は何だ」
「……」

 夕日に照らされる隼人がいつも以上にかっこよく見えてしまい、何となく照れて黙っていると、ぐっと腕を引かれて手が繋がれる。

「手繋ぎてぇとか言うんだろ、どーせ」
「違っ…いや違くないけど……そうじゃなくて!」
「あ? じゃあ何なんだよ?」
「1回…」
「は?」
「1回でいいから、ぎゅーっと」
「……は?」
「し…して、ほしいなー……と…」

 隼人の眉間の皺が少しずつ増えている気がして、最後の方は小声になる。やっぱり人通りが少ない道とはいえ、こんなお願いは無理だったかな。
 しかも相手は隼人だ。絶対に恥ずかしがって、嫌がるに決まっている。

「ちっ」

 ほら、やっぱり舌打ち――。

「………あれ?」
「あれ? じゃねーよ、馬鹿」

 確かに聞こえた舌打ちは、頭上からのもので。見上げればすぐそこに、隼人の顔。近すぎて、思わず顔を逸らしてしまった。

「おい、なまえ。こっち向きやがれ」
「………」

 隼人に顔を向けた瞬間に噛み付くようなキスをされ、思考がついていかずに静止していると、また強く腕を引かれる。

「帰るぞ。ばーか」
「……」
「しっかり歩かねーと、置いてくかんな!」

 半ば引きずられつつ、やっとのことでぽつりと呟く。

「隼人、好き…」
「……うっせ。分かりきってる事言うんじゃねーよ」
「あ、隼人」


 それから、


「さっきキスしたとき…」
「あ?」
「びっくりしすぎて意識なかったから、もう1回して?」
「…は?」
「お願い」
「もう二度としねぇ」


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