俺は最近なんだか、おかしいんさ。頭がとかじゃなくて、こう……体がおかしい。別に風邪なんか引いていないし、病気ではないことは確かだ。明確に何が原因なのか分からないんじゃ、薬も飲めやしない。
「ラービっ」
どくん。ほら、また。心臓が跳ねる。なまえが話しかけてくると、心臓が飛び出そうなほどに跳ねてきゅっと痛くなる。それを堪えて、へらりと笑って返事をする。
「…おー、なまえ! どうしたんさ?」
「ラビ、これ…資料室に運べって言われちゃって。もし暇だったら手伝って? 1人じゃ重くて」
困ったように笑うなまえに応え、資料を抱える。
「あっ、ラビ! そんなにいいよ、重いでしょ?」
なまえは俺が抱えた資料の量を見て、慌てて止める。いつも倍以上の資料を抱えて歩いている俺にとっては、このくらいの量はなんてことはないのだけれど。
「全然大丈夫さ! なまえこそ、そんな細い腕でこんなの持ってたら折れちゃうさー」
「もう、ラビったら……でも、ありがとう」
ふわりと微笑まれ、嬉しくて堪らなくなった。
しばらく歩いて資料室に着き、資料を棚に戻す作業もついでに手伝うことにする。背が低いなまえは、俺の目線ほどの高さの棚にも必死に背伸びをし、椅子や梯子を使ったりしていた。重い資料を持ちながら手を伸ばす姿は不安定で、とても見ていられない。
「貸してみ? 入れてやるさ」
「ありがとう、ラビ」
背後から手を伸ばせば、俺の胸に軽くもたれかかるようにして見上げてくる。
どくん。また、だ。なんだこれ。無性にドキドキするし、焦点が合わない。よく見ればなまえの整った顔は目の前だし、考えてみれば彼女は今、俺の腕の中に――。
こ……この感情は、何て言うんさ…?
「ラビ?」
ああ、そんな目で見られたら。
――ちゅ、
くら、り
「ら、ラビっ…!?」
「分かったさ、俺……」
「え?」
「なまえが好きなんさ!」
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