僕の可愛い恋人は、なかなかの浮気者だ。いや、小悪魔と言うべきか。皆に笑顔で寄っていって期待させておいて、僕の元へ戻ってきては男性陣を撃沈させる。
 おまけに彼女は、コムイさんのお気に入り。彼の妹のリナリーとほぼ同じ待遇で可愛がっているため、彼の目の前で下手なことはできない。ほら、今だって目の前にコムイさんがいるというのに――。

「アーレーンー!」
「わっ、なまえ!」

 僕に気付くなり、全速力で駆けてきてダイブしてくる。それを抱き留めると、

「アレンくーん。キミが抱きしめているのは、ボクのなまえちゃんじゃないかなー」
「コ、コムイさん……いや、今のはなまえがダイブしてきて…」
「行け、コムリン!」
「え、新作!? この前やっとの思いで壊したのに!」

 そんなこんなでお昼時、彼女はまたもや小悪魔になるのだ。

「ラビ、それちょうだい!」
「ん? 食べたいんか?」

 ああ、ラビったらまた鼻の下伸ばして……なまえは僕の恋人ですよ? あなたが使ったフォークをそのまま渡さないでください! って、今度は神田に……!

「……なまえ、邪魔だ」
「お蕎麦おいしい? ちょうだい!」
「テメェ、自分のサラダ食ってからにしろ」

 んな…! なまえを邪魔者扱い、しかもテメェ呼ばわりですか! 神田……あとでその自慢のパッツン前髪、綺麗さっぱり剃り落としてやりますよ。

「アレン!」
「……ん? 何ですか、なまえ」
「どうしたの、怖い顔してる」

 あなたのせいですよ――などとは言えず。

「いえ、少し考えごとを」
「ふーん……あ、アレンはアイス食べてる! ちょうだい!」
「……よく食べますね、なまえも。どうぞ」
「アレンに似たんだよ。たくさん食べるところは」

 そう言いながら、口いっぱいにアイスを含むなまえ。返ってきたアイスは、もうすでに残り少なくなっている。……仕方ないな。

「なまえ、食べますか? 残りのアイス」
「食べる!」
「……じゃあ、ちょっと待っててください」
「へ?」

 きょとんとするなまえの目の前で、残りのアイスを全て口の中へ含む。そして彼女に口付けると、溶けたアイスが互いの口内をひんやりとさせながら行き来する。

「あ、うう……アレン…」

 にっこりと笑ってあげれば、口をぱくぱくと開閉させるなまえ。未だに何故こんなことをされたのか理解できていないようなので、頭を撫でながら囁く。

「僕の前でラビたちとあんなに仲良くして……そんなに僕に嫉妬させたいんですか?」
「えと、あの……ごめんなさい」
「分かってくれればいいんですよ」

 僕はこんな意地悪をしたくなるほどに、


 愛しくて仕方がないのですよ。


「アレンの意地悪」
「何とでも言ってください」
「アレンのドS」
「今頃気付きましたか?」
「………」


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