「……」
「…………」

 俺を見上げて目潤ませてんのは、一応彼女であるなまえだ。何なんだ、まったく。俺が何かしたかよ?

「……んだよ」
「隆也」

 俺の方へ倒れ込むように抱きつかれ、バランスを崩してソファへどっかり座り込む。仕方なくなまえを膝へのせてやると、俺の首に絡む細い腕の力が少し強くなった。それでも、小さな力だけど。

「なまえ?」
「んー、隆也のにおい」
「は?」
「安心する」
「……そうかよ」

 できるだけ優しく髪を撫でると、嬉しそうに俺の首筋に擦り寄ってくる。

「隆也が優しい」
「……どういう意味だよ」
「ふふっ」
「……変なやつ」

 とか言いながら、口元が思いきり緩んでる俺がいるんだ。


 甘い時間


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