「お前、俺のこと好きだろ」
「は?」

 急にまた変なことを言うやつだな。今日の榛名は一段と変なやつだ。絶対何か悪い物でも拾い食いしたか、朝練でミスったボールでも頭にくらったんだろう。ご愁傷様…。

「何、手合わせてんだよ」
「いや……何か悪い物でも取り憑いてるんじゃないかなって…」
「なんでだよ! いつも通りだろーが!」

 まあ、言われてみれば顔とか声とか動きはいつも通り……か? え? じゃあ、さっきのは素で言ったってこと?

「で、どうなんだよ」
「何が?」
「お前俺んこと好きだよな?」
「だから、その自信は一体どこから…」
「は?」

 は? だと…? それは私の台詞だ。どこまで自信家なの、こいつ。私が榛名を好き? ないない。ないだろう。でもこの展開にはちょっとだけどきどきしなくもない。何故だ。

「ほらな」
「へ?」
「やっぱお前、俺のこと好きだな」

 お前今日から俺のだかんな、と満足げに馴れ馴れしく人の頭を撫で回し、榛名は自分のクラス(しかも隣の教室)へ戻っていった。残ったのは、未だ鳴り止まぬ心臓を押さえる私と、キャーキャーと囃し立ててくる友達。
 不覚にも――。


 心、持ってかれた(かもしれない)


「で? どうよ」
「は?」
「そろそろ俺のこと好きって分かった?」
「…っ、黙れ榛名のくせに!」


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