頭が良くてスポーツ万能で、超かっこいい準太くん。宿題教えてほしいなあ――なんて見え見えのお世辞を言ってきたコイツの宿題を、俺は今手伝っている。俺だって部活も宿題もあるってのに、情けないことに断りきれなかった。
 コイツが和さんの大事な大事な妹だから、っつーのは関係なくて(いや少しはあるけど)コイツは俺の……一応、彼女なわけで。ちなみに和さん公認。

「は? 俺だって宿題が――」
「………そっか」
「………」

 あんなにしゅんとされたら断れないだろ、普通。しかし、コイツに勉強教えるとなるとかなり体力使うのも事実。俺のハナシ聞いてないし。

「なまえ、聞いてんの?」
「あ、う…はい!」
「……ここはまだ簡単だろ。昨日の授業で線引いたとこだし」
「そう、なの?」
「………」

 さてはコイツ寝てたな、確実に。ってことは教科書も真っ白かよ、俺でもアンダーラインくらい引いてんのに。でも一応解けてんな。今回は思ったより早く片付きそうだ。よし、あと5問。と意気込んだところで緊急事態。


「うー……」
「……は? ちょっ、なまえ」

 寝やがった……ノートの上に突っ伏して。おいおい、あと5問じゃんか。何のためにここまで来たんだ、起きろよ起きてくれ! 心の中で叫びながらなまえの体を起こすが、すぐにかくんと下がってしまう頭。限界か。

「なまえ」
「………ん」
「なあ、マジで寝んの?」

 下がったなまえの顔を覗き込む。と同時に、なまえが目を見開いて後ずさり…をしようとしたけど、後ろは壁。

「何にびっくりしてんの」
「だって、近い」
「……何が?」
「か お が !」

 なまえは真っ赤になって恥ずかしがりながら、クッションを盾にして俺との距離を取る。今まで宿題教えてる間も結構近かったのに、今更恥ずかしがるのか。……こういうことされると、いじめたくなるんだよな。

「……」
「や、だめ! 今は来ないで!」
「なんで」
「なんか恥ずかしい…から?」

 もう無理だろ。こんな真っ赤になって照れてんの見たの久々だし……今の俺には色々と抑えられる自信がない。勉強教えてやんなきゃとか、落ち着け自分とか、自分で自分にストップかけてるのに、全く効かない。

「……なまえ」
「……うぁ」

 何なんだ今の声。抱きしめた瞬間に変な声出すから、ちょっと笑いそうになった。だが堪える。ゆっくり体を離して額を寄せると、なまえはまた照れて目を逸らした。
 低めに意識した声で「キスしていい?」と一応聞けば、「聞かないでよ」って耳まで赤くなる。……俺はたぶん、相当コイツに弱い。


 触れたのは一瞬だけ、だけど
 すげー可愛い顔見れたから満足


「なまえ、準太。宿題進んでる…か……」
「あ、お兄ちゃん。麦茶ありがとう」
「和さ……あの、これは」
「準太明日特別メニューな」
「…………はい」


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