なんで国語の授業の後って、こんなに眠いのか。授業中も眠いけど。これから部活だってのに、頭と瞼が重い。1日の最後の授業が体育なら、眠くなんかなんねーのに。

「榛名、榛名」
「何だよ秋丸、眠いんだ。呼ぶな」
「いや、なまえが来てる」
「……それを先に言えよな!」

 振り向くと、校舎の方からぱたぱたと走ってきて、ちょっと離れた所から俺を呼んでいるなまえが見えた。一応、俺の……片想いの相手ってやつだ。

「元希ー!」
「おう、何だよ」

 ……何だよって何だよ! 素っ気ない態度を取ってどうすんだよ! とは思っているが、簡単には直らないこの口調。横で秋丸が呆れた顔してるのが、容易に想像できた。

「すきー!」
「………………………は?」

 叫んだと思ったら、全速力(おそらくあれがあいつの精一杯だ)で走って校舎の方へと戻っていく。それより、あいつ今なんて言った…?

「好きだってさー榛名」
「お前モテるんだな」
「……は、え!? あ、」

 先輩たちや他の部のやつまで寄ってくる。そして秋丸にもゲラゲラと笑われて、やっと状況を把握。たぶん俺は今、真っ赤で格好悪いと思う。

「……こら! 言い逃げすんな!」

 俺も全力で走り出す。小さな背中を捕まえるまで、あと数秒。


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