「田島、三橋ー! 集合だって!」
「おー!」
「う、うんっ!」

 泉から声がかかって、走って皆の所へ戻る。後ろからはタッタッと三橋の足音がついてくる。前の方にはもう皆が集まっていて、練習が終わるにはまだ早い時間なのに何だ? と円の中心を覗き込む。するとそこには、見慣れた顔があった。

「あー! なまえ!」
「悠一郎!」
「えっ、田島の知り合い?」

 俺から見ても結構下の方にあるその頭は、間違いなくなまえのものだ。おー! と声を上げながらなまえの所へ寄っていくと、ぽすんと抱きついてくる。受け止めて小さな頭をぐりぐりぐりと撫で回す俺の横では、周りの皆が目を丸くして「説明しろ」と言わんばかりの顔をしていた。

「あれー? 言ってなかったっけ」
「田島なまえです」
「……えっ」
「これ、俺の双子!」

 ぎゅうっと俺のユニフォームの裾を握ったまま自己紹介をするなまえを指して言うと、「えー!」と皆揃ってデカい声を上げる。なんだよ、俺に双子いんのってそんな驚くこと? だってウチ、ただでさえ大家族だし。双子いたって別に驚くことなくねー?

「言われてみれば…」
「顔がなんとなく似てる、かな?」
「あ。なまえちゃん今日から、2人目のマネージャーだからね!」

 しのーかが繋げてなまえを紹介してくれる。そうそう、思い出した。一緒に野球やりたいやりたいってうるさいから、選手は無理だけどマネージャーにでもなればって言ったんだっけ。ほんとになるんだ。じゃあ、毎日部活でも会うのかー。
 お? 皆固まってる。面白いなー。

「そーだ、なまえ! お前の背中にも番号書いてやるよ!」
「えぇ…いいよ番号は」
「何番がいい? じゃあ1016な!」
「ちょっ」

 なまえからの答えを聞く前に、キュッキュッと音を立ててTシャツの背中に1016と大きく濃く書き入れる。「あああ勝手に!」と声がしたけど聞こえないフリ。

「なんでこんな大きい番号!」
「んー? 俺らが生まれた日!」

 左手でペンを回しながら空いた右手で頭を撫でると、「なるほど! じゃーコレでいい!」納得した顔で頷いた。俺も着替え用のTシャツに1016って書いちゃおーかな。


 田島家双子は元気いっぱい


「悠一郎、お腹空いた!」
「俺もー!」
「家から食べ物取ってくるね!」
「おお、さすがなまえ!」

「なぁ花井」
「何だ泉」
「……間違いなく双子だよな」
「ああ、間違いなく双子だ」


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