今日は天気も良くて、ぽかぽかしていて気持ちが良い。いつも通りに赤丸と散歩に出ると、赤丸も気持ち良さそうに目を細めながら歩いた。

「赤丸、そろそろ時間だ」

 優しく頭を撫でてやると、俺の問い掛けに応えるように吠える。……今日はこれからちょっと待ち合わせがあるからな。遅れるわけにはいかない。

「遅いわ、キバ」
「……わりぃ」
「ごめんなさい、でしょ?」

 ……とか言いながら遅れちまった。待ち合わせの相手は、ほかでもない俺の姉、なまえだ。だいぶ早く着いていたらしく、遅いと怒られちまった。

「赤丸、久し振りね」

 なまえは赤丸の頭を数回撫でると、すたすたと歩いて行ってしまう。

「なまえ、待てよっ」
「待ってください、でしょ。もう!」
「……待って、ください」
「はい、何ですか」
「どこ行くんだよ、今から」

 確かに久々に会ったけど、用事ってのはただ一緒に散歩する事だったのか?
 不思議に思って問い掛けると、なまえは前へ向き直り、また歩き始めた。

「嫌なら来なくていいわよ。甘味処でも寄って何か奢ってあげようかとも思ったけどね」
「……行かないとは言ってないぜ。行くぞ赤丸」

 なまえの後を赤丸と一緒に大人しくついていくと、団子をたくさん買ってくれた。本当は店の中で食べたかったんだけど……ちょっと駄目だったんだよな。

 その理由は……、

「お客さん、うちは犬はダメだよ」
「……赤丸だけ待たせるわけにはいかないわね、可哀想だわ」
「ああ」
「お団子だけ買って行きましょうか」

 ってわけだ。


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