向こうからパタパタと小さな足音を立てて走ってくるのは、俺の大切な娘のなまえ。もうこれが可愛いのなんの……皆からは甘やかしすぎだと怒られているが、全く気にしていない。

「なまえ」
「なに、お父さん」
「今日は俺と、お外でデートなんていかがでしょうか?」

 なまえと目線を合わせるようにしゃがんで、手を差し出す。するとなまえはにっこりと笑って、俺の手に小さな手を重ねた。おしゃれしなきゃ! と部屋へ走っていく姿は、堪らなく可愛くて。

「見て! この前、お母さんに買ってもらった服なの」

 着替えてくるなり、俺の目の前でくるりと回って見せてくれるなまえの頭を撫でてやる。

「とっても似合ってるぞ、なまえ」
「ありがとう、お父さん」
「さ、じゃあ…お出かけしようか」
「うん!」

 小さな手を握って、なまえの歩幅に気を遣いながらゆっくりと歩き始める。キラキラした飾りのついた店や、甘味処の前で立ち止まるあたり、まだまだなまえは子どもだなと頬が緩んだ。

「あー! なまえ!」
「あ、ナルトのお兄ちゃん」

 すると前からナルトがやってきて、なまえに声をかけた。……ここは恩師の俺に声をかける所でしょ、まったく…。

「なまえ、こんな街中で何やってんだってばよ? 買い物か?」
「んーん。今日はね、お父さんとデートなの」
「デート!?」

 ああ、なまえったら本当に素直なんだから……ナルトにバレるとうるさいからな…。

「カカシ先生、なまえにデートなんて言葉教えちゃダメだってばよ!」
「ん?」
「俺ってば少しびっくりしたー……なんだかなまえが急に大人っぽく見えたってばよ…」

 そう言われてなまえの方を見てみると、向かい側の店で髪飾りを見ていた。店員に試しに付けてもらっていた髪飾りは、大人っぽい紫色の蝶の形のもので。本当になまえが、大人っぽく見えた。

「………なまえ、帰ろう」
「え、もう?」
「その髪飾りは、俺が買ってやるから。な、帰ろう」
「? うん……」


 の思わぬ成長


「あれ以来、なまえはずっと蝶の髪飾りしてるってばよ」
「……よっぽど気に入っちゃったみたいでね」
「やっぱりあれつけてると、なんか色っぽく見えるってばよ」
「……ナルト」
「じょ、冗談だってばよ!」


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