大好きな私の兄さん。とても優しくて、そして強くて、小さな頃から憧れていた自慢の兄さん。
 どんなに修行や勉強をしても、兄さんには追い付けなくて。そんな私を、兄さんはいつも優しく助けてくれる。今は四代目火影と呼ばれるすごい人だけれど、私から見たらやっぱり「兄さん」で。

「兄さ……火影様」
「いつも言ってるだろう? 兄さんでいいよ。なまえは俺の妹なんだからね」

 頭を撫でてくれる兄さんは、いつもと変わらない優しい笑顔で。もうじき生まれてくるという赤ちゃんも、きっと兄さんに似た素敵な笑顔を持って生まれてくるのだろう。

「さっき見てきたけれど……義姉さんのお腹、ずいぶん大きくなったのね」
「そうだね。あの子が生まれたら、なまえは叔母さんになっちゃうけどね」
「あ、そっか。兄さんの子だもんね」

 二人でくすくす笑い合っていると、鍋にお湯が沸いたのを知らせるコポコポという音が聞こえてきた。

「本当にうどんでいいの?」
「うん。どうして?」
「せっかくなまえの上忍合格祝いなのに。もっと色々頼んでもいいんだよ」

 麺を用意しながら、兄さんが私の顔を覗き込む。そう、今日は私の上忍合格祝いに兄さんがご馳走を作ると言うから、うどんをリクエストしたのだ。
 もっと豪華なものを頼んでもいいよ、と兄さんは言うけれど、私には豪華な料理なんか意味がない。

「兄さんが作ってくれるんだもの」
「え?」
「派手じゃなくてもいいの」

 そう言ったら少し恥ずかしくなって、台所を出て少し離れた所にある椅子に座った。気付かれないようにそっと振り向くと、優しい笑みを浮かべながらうどんを茹でる兄さんが見えた。



「少し伸びちゃったけど。いい?」
「うん、おいしそう」
「なまえ、上忍おめでとう」
「ありがとう。兄さん」


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