「おい、俺のメシは」

 いかにも布団から出たばかりという格好で現れた兄さんは、髪の毛もハネているし角都さんには睨まれている。
 今日は朝から任務だったというのに、兄さんたら寝坊するんだもの。報酬第一の角都さんが、遅刻で報酬が減るんじゃないかと内心そわそわしているだろうと予想するのは、容易い事だった。

「なまえ、聞いてんのかァ? 俺のメシは」
「ないです!」
「あ?」
「角都さんに出しました」
「……は?」

 待ってもらっている間、間がもたなかったものだから。ご飯まだですよね? と言って、角都さんに出したのだ。お口に合ってよかった。食事に免じてお待ちいただけたんだもの。

 ぴしゃりと言うと、兄さんは頭をガシガシと掻きながら軽く舌打ちをして、暁のマントを羽織った。やっと任務へ向かう気になったのかと安心したのも束の間、兄さんの口から出た言葉は……、


 メシ食いに行ってくる


「兄さん、ダメ! 角都さんとの任務が」
「任務なんざメシの後だ! 腹が減っては儀式が出来ぬって言うだろ?」
「(造語…!)角都さん、すみません」
「おい。なんで頭なんか下げてんだ、なまえ」
「……飛段、お前は妹を見習え」
「あァ? なんでだよ」


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