麦わら海賊団の船の中、女部屋。カリカリとペンを走らせているのは、私の姉さんのナミ。海図を描くには皆と同じ部屋ではうるさすぎるから、ここに一人で籠っている。そっと部屋へ入って、姉さんの肩をとんとんと叩いた。

「! びっくりした、なまえかぁ」
「ごめんなさい。驚かせて」
「どうしたの?」

 また海図に新たな線を引きながら、私に問いかけてくる。シャッと音を立てて、ペンが紙の上を滑っていく。

「サンジさんが、おやつとお茶の用意が出来たからナミさんを呼んでおいで、って。行きましょ、姉さん」
「そうね……この1枚だけ書いちゃうわ。なまえは先に行ってていいわよ」
「ううん。海図描いてるのって、見てるの好きだから。それ終わるの待ってる」
「そう? じゃあ、なまえもこっち座んなさい。そこに椅子あるから」
「うん」

 一番手前にあった椅子を持ってきて姉さんの隣に座ると、少し場所をずれて作業が見やすいようにしてくれた。しばらく見ていると、この前入ったばかりの島が、だんだんと綺麗な海図の中におさまっていった。

「よし、っと」
「すごい……綺麗ね」
「でしょ? だって私が描いたんだもの」

 姉さんはふふっと笑いながら、完成したばかりの海図をクリップで留めて吊すと、あとは乾かして完成、と呟いた。

「なまえにもそのうち、海図の描き方教えてあげる」
「え?」
「グランドラインはまだまだ広い。私達が通った島たちは、その一部に過ぎないわ。全ての海の地図を描くために、なまえにも手伝ってほしいのよ」
「姉さん……」
「世界地図を描くのは、私達の夢。そうでしょ?」
「うん!」
「さ、お茶冷めちゃうわね。行きましょ、なまえ」

 そうして姉さんに手を引かれて部屋を出ようとした時、待ちきれなくなったサンジさんが呼びに来たのだった。

「ナミさん、なまえちゃん! なかなか来ないから呼びに来たんだ。お茶冷めちまうぜ」
「ごめんなさい、サンジさん」
「いや、海図を描いてたんだろ? 謝る必要ねェさ。こっちへ座って」
「わあ、おいしそう!」
「本日のリラックスおやつは、苺のプチケーキです。お茶はアールグレイを」
「ありがとう」


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